御礼企画

□いい夢を。
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何とか一日の任務をこなせた事が少し不思議な程だった。
駄目だ、駄目だ。
絶対にそんな訳は無い。
期待なんか、するな。
何度も自分に言い聞かせてばかりだった。
「ランファン」
「はい」
自室に戻ろうとした私に、彼の声が掛かる。
心臓の音が、胸の奥から深く重く響く。
「面を、外してくれ」
何故だろうと、鼓動が速まる。
困惑した。
「外してくれないと、俺が外すよ?」
彼は、悪戯な子供の様に笑っている。
「…はい」
私は、面を外した。
自分がどんな顔をしているのか、自分でも判らなかった。
「ありがとう」
彼が言った。
私の頬に、掌を添えて。
「今日もありがとう。お休み」
「?」
私は首を傾げた。
「うん。それだけ。いい夢を、ランファン」
私は彼の後姿に頭を下げた。
これ以上悟られたくなかった。
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