小説(テニプリ)

□lie and...(R15)
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「不二」
「何、英二」
母さんが持ってきたスナック菓子を齧りながら、英二が僕を呼んだ。彼の大きな目が、僕を覗き込んでいる。
「嫌い」
スナックの小さな欠片がついた唇が、その言葉を漏らした。
「えっ…?」
僕は思わずびくっとしてしまった。しかし、感情の波は悟られたくない。
「何の冗談だい、英二」
出来る限り声を低く保ち、僕は英二に訊いた。
空気が、張り詰める。
しかし、その空気はほんの数秒で千切れた。英二の、腹の底からの笑い声によって。
「不二、真に受けてやんのー!」
口を大きく横に広げ、英二が言った。
「今日は何の日だ〜?」
はっとした。今日は4月1日、エイプリルフールだったのだ。
不意を突かれた事が、少し悔しかった。
そして僕は、英二の唇を強く奪う。彼が驚くくらい。
案の定、英二はやがて僕に身を任せる。
「今夜は帰れると思ったら大間違いだからね、英二」
僕は、英二の耳朶にそっと息をかける様に呟いた。
「嘘…っ」
英二が顔を赤く染め、戸惑いを露にする。
「嘘じゃないよ」
これは、嘘じゃない。
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