頂き物

□異国の友のしあわせを
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気はこの世のどこにでも存在し、互いに影響し合っている。
龍脈とはこの気の大いなるな流れで、王たる者はそれをあやつる力があるとされているが、それは本当だろうか。
皇帝とは龍脈を感じとりやすい場を与えられた、龍脈の流れの意味を知りそれを広める役を担う者なのだろうとリンは思う。
その証拠にごく小さな雑多なものに流れる気は臣下のほうが読める。
「おそらくいい知らせがありますよ。」
昼間は黒装束を着こみ物陰にひそんで表に出ることのない腹心の臣下がどこからともなく女官姿で現れ、文箱を掲げて微笑む。皇帝ではなくリン個人に宛てられた書簡は彼女に扱わせている。ランファンはそれらを手にとるだけでそのまとう気が読めるらしい。

文官・武官に囲まれる国の統治者としての皇帝の居場所は玉座だ。
そして夜の居場所は後宮と決まっていた。
しかし全民族をまとめて守ると誓ったからには、宦官の企み跋扈する後宮に用はない。今、皇帝の私的な空間は機能的に改築したごく小さな殿舎だ。
譲位が決まると同時に権勢を求めて娘を差し出そうとする各部族の首長たちにリンは早々に釘をさした。
「私はまだ二十歳にもならぬ若輩。即位したばかりなのに先帝の菩提を
弔ってすごす妃方を後宮から追いやるような無体はできぬ。」
先帝への孝を持ち出せば、異を唱えられる者はいない。
のらりくらりとかわせばいい。力を使うことはない。
世界は刻一刻と変化し続けている。もちろんシンも。
いずれはすべてこの国を俺の思う理想どおりにしてやろう。
俺は世界を手に入れるはずだった強欲の魂を継いだ男なのだから。
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