小説(鋼)
□ホタルブクロ
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もう、何日目だろう。
遥か西を目指し、ひたすら地上を横切る日々。
小さな川やオアシスがある場所に出れば体を洗う事は出来るが、夜は草枕だ。
彼女の黒い髪は、土の上に零れ、横たわる。もう、何日も櫛を通されないまま。
長旅に伴う荷物は、最小限にとどめている。櫛はその「最小限」に含まれないと、彼女が判断したのだ。
それでも俺は、彼女の髪に手を通す時、指の間を滑らかにすり抜ける艶の間隔が、とても好きなのだ。
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