小説(鋼)

□想
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カキン、カキンと刃のぶつかり合う音が重なる。
――ランファンとフーの鍛練を、俺は少し離れた所から見ていた。
実戦を想定しているのか、二人共仮面で顔を隠し、鎧で身体を守っている。
「――よし、今日はここまで」
「はい」
苦無を握った手を止め、ランファンは顔から仮面を、身体から鎧を外した。
――いつからだっただろうか。
固い鎧に包まれていないランファンの身体が描く曲線に、目が惹きつけられる様になったのは。
仮面を外したランファンの、さらさらと輪郭を縁取る黒髪を、白い肌を、桜色の艶を纏った唇を、愛おしいと思う様になったのは。
しかしランファンは、俺のこの心に気付く事無く、刃を振るう。
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