小説(鋼)

□償いと慰めと最愛(R15)
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甘い喘ぎと、キリキリと響く義手の軋み。
黒装束の下に秘めた白い肌と、その上の紅い瘡蓋。
――一人の少女が抱える不均衡。
リン・ヤオはランファンの鋼鉄の黒い腕に触れた。刃が仕込まれているこの腕は冷たく、体温を感じる事は出来ない。
そして、彼女の右腕に、胸に――白い裸体の上に残る瘡蓋を見据えた。闘いの痕跡は、あまりに生々しい。
この美しい少女が左腕を失ったのも、白い肌に傷痕を刻み込んだのも――。
自責の念は、容赦無くリンを襲う。
どんな謝罪の言葉を述べても、ランファンが凛とした表情で「私がリン様の為、望んだ事です」と言う事は、リンには強く解っていた。
リンは、一つ一つの傷痕を指先で愛撫し、そっとくちづけていく。
せめてもの慰めとして、出来る限り優しく。

ランファンはリンに身を委ね、二人の躰が重なり合う。
――こんな夜を、いつまで続ければ良いのだろう。
リンは、守る様にランファンを強く抱き締めた。


END

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