小説(鋼)

□氷点下の姫君(R15)
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白いシーツの皺が、大きく波打つ。その上に、少女の黒い髪が墨の様に零れ落ちる。
少女の頬は紅く染まり、桜色の唇から溢れる吐息が、少年の肩をくすぐっていた。
「ランファン」
少年が、そっと少女の名を呼んだ。臣下でもあり、愛しい人でもあるその名前を。
「リン様…」
ランファンは、大きな黒い瞳で目の前の少年を見つめる。優しい眼差しだった。
「俺の夢を、聞いてくれないか」
リンの問いかけに、ランファンは、はい、と頷いた。
「俺は、必ずこの国の皇帝になる。そしてその暁にしたい事が、沢山あるんだ」
「…はい。リン様なら必ず、成し遂げられましょう」
ランファンは、太陽を仰ぐ様な表情をし、微笑んだ。
「…まず」
リンの手が、ランファンの額に触れ、髪を撫でる。愛おしさに満ちた、優しい手つきだった。
「ランファンを、正室に」
思わず目を見開き、えっ、と言ってしまっても、その言葉に一滴の嘘すら含まれていない事は、幼い頃から仕えているランファンには強く解った。
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