小説(鋼)

□求揚姫(R18)
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セントラルシティーのホテルで、異国の少女が一人、シャワーを浴びていた。
滑らかな腰のライン、成熟した乳房の上に、幾つもの透明な筋が描かれる。
少女はふっと息をつくとシャワーを止め、そこにあったタオルで体を拭いた。そのままそれをくるりと体に巻き、ドアを開けた。
「ランファン」
彼女の名を呼ぶ声の主は,部屋のソファーに腰掛けていた。
「無防備すぎだな」
ランファンの顔が、ぼっと赤く染まった。主であり、恋人でもあるこのリン・ヤオは、彼女ににやにやとした目を向けている。
ランファンは、二の腕に手を回した。恥ずかしくてとった行為なのだろうが、タオルの隙間からわずかに見えた谷間が、彼を誘ったようだ。彼はあっと言う間にランファンの背に回り込み、肩から手を回して首筋から胸を掌でするすると辿る。
「ん…ッ」
ランファンは唇を噛んだ。くすぐったさが心地良いが、何回リンと肌を結んでも後ろめたさはある。リンを「主」として慕っているうちに、別の感情が心に芽生えたというのには偽りは無い。リンも、自分がシン国の皇帝になったら、必ずランファンを正室に迎えると言っている。しかし、自分の身分は、「臣下の娘」にすぎないのだ。
「どうした?」
リンが言った。
ランファンは、「何でも…」と首を振り、リンの方を見やる。そしてそのまま、リンの唇にそっとくちづけた。珍しい、彼女からのくちづけだった。
数秒の後、気付くとリンの舌がランファンの唇をつついていた。ランファンは、固く目を閉じ、リンの舌を受け入れた。二枚の舌が絡まり合い、水音が響く。
リンの腕がランファンの腰に回ってきた。
「あ…ッ」
ランファンがビクッとする。リンの手が、生身の素肌に触れていた。いつの間にか、タオルが剥がれ落ちていたのだ。
リンの手は腰から背中へ、そして肩へと這い上がり、ランファンの胸へと回り込んだ。豊かな乳房の下を撫で、親指で乳首をころころとくすぐる。
「ん…あぁ…っふ」
ランファンの桜色の唇から、断続的に短い喘ぎが零れ落ちてくる。それが激しくなるにつれ、乳房の中心は引きつった様に硬化していった。
「…そんなに気持ちいいか?」
「…っあ…、ん…っ…は」
答えることはできない。痙攣した様な声が溢れ出てくるだけである。
「…そうか」
リンは短く言うと、ランファンの唇から肩を、時に舌で湿らせながら唇でなぞる。片手で胸を弄びながら唇でも彼女をくすぐり、空いている方の手で、彼女の太ももの間にそっと触れた。
「あ…ッ」
人差し指と中指を動かし、ランファンのそこを撫でる。ぬるぬるとした液体が溢れ出してはリンの指に落ちてきた。
ランファンは、はぁはぁと甘い息を漏らしながら崩れる様にぺたりとその場に座り込んでしまった。体のあちこちを襲ってくる快感に、もう耐えられなくなってしまっていたのだ。
「は…恥ずかし…ぃ、…ッ」
ランファンは、紅色に染まった顔を両手で覆った。泣きたい程だった。そのまま、彼女はふらりと倒れ横になってしまった。
「大丈夫か?」
リンの声がしたが、近くのはずなのに、不思議と遠くに聞こえた。ランファンは、顔を隠したままこくこくと頷き、細い声で言った。
「どうかもう…このまま…好きに」
ランファンは、指の隙間をゆっくりと広げた。するとそこには今まで見たことのない柔らかい表情のリンがいた。
「…いいのか?」
呟く様に、リンが言った。
冷めかけていたランファンの体が熱を纏う。彼女は顔を隠していた手を、リンの頬にそっとあてがった。胸の真ん中から、彼を求める気持ちが、まるで血潮の様にしぶいていた。
「はい」
ランファンは、はっきりと声に出して答えた。
言って程なく、薄い唇の上にリンの唇が重なり、何度もくちづけ合う。徐々に深くなるくちづけは、ランファンの顔を火照らせていった。
唇が離れると、リンは僅かな距離をも嫌う様に手をランファンの乳房に被せ、握る様に、強いリズムをつけて揉む。そのリズムに、ランファンの艶めいた喘ぎが重なる。今日のリンは激しい。
いつの間にか、リンの手はランファンの胸から腰の曲線をなぞり、再び太ももの間を強く撫でる。ランファンの声はどんどん上ずり、愛液も止めどなくリンの手を濡らしてゆく。
「…ッあ!!」
ランファンの嬌声が、高い悲鳴に変わった。リンの指が彼女に突き刺さったのだ。しかも突然三本程入れられた様だ。
「…っふ、や…、んぅッ…!」
リンは、ランファンを掻き回した。ちゅぷちゅぷと響く淫らな水音と甘い、酔った様な声が重なり合い、リンの指の動きは激しさを増す。
ランファンは、刺激と共に溢れてくる快感に耐えられず、リンの肩にしがみついた。それを彼女からの合図と受け取ったのだろう。リンが衣服から自身を解放し、ランファンと重なる。そして一気に自分と彼女を結び、思い切り彼女に感情を注いだ。ランファンの中心を、熱が走る。
「んあぁっあ!」
悲鳴と同時に、リンの肩に回されていたランファンの腕から、爪がきつく立つ程の力が溢れた。彼女が戦士であるといえど、この華奢な体からのものとは思い難い力だった。
少し間を置いて、ランファンは力を抜きリンを見やった。
リンはランファンの腰を抱き、ゆっくり自身を抜き出した。下品な水音と濡れた声が重なる。そして糸を引く自身で、再び彼女を貫いた。
「…っは!」
歓喜に酷似した感情が口から溢れ出た。同時に彼女のそこはリンを縛り、彼の眉間に皺が寄る。
「く…」
そのままリンは力を絞り出して彼女の中を這いずり回る。
「あ、あぁあ…んぅ…ッ!」
声を上げながらランファンは体をくねらせた。体術で手にした柔軟な体は、行為の度に曲線を描き、乱れる。それは、彼女の快感が間もなく絶頂に跳ね上がることを意味していた。目が細くなり、眉が下がった顔は紅く上気している。リンだけに見せるランファンの姿だった。
目を開けるのも苦しかった。だがその苦しみは喜びに似ていた。ランファンは溺れそうになりながら大きな瞳を開いた。
――リンの顔が見える。

気がつくと、ランファンはリンと重なり、手を繋いで床の上で眠ってしまう直前だった。
繋いだ手に力が入る。
「ランファン」
リンが言った。
「…俺を好きか?」
リンの手がランファンの輪郭をなぞり、ランファンも同じ様にリンの感触を確かめた。
「すき」
出来るだけ強く、ランファンは言った。
「それでいい」
そう言うと、リンは父親が子供にする様にランファンの髪を撫でた。
ランファンの顔はまるで桜桃の様に紅く染まっていた。

END

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