小説(テニプリ)

□空と君と
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真っ白な画用紙を空色の絵の具で塗り潰した様な澄んだ青の上に、白い羊雲が群れを作っている。
放課後、俺は不二をその下に誘った。
屋上には、俺たちしかいない。
「すっごい羊雲ー!ここだと何か俺たちが独り占めしてるみたい!」
「二人占めでしょ、英二」
不二にクスっと訂正され、俺は少し気恥ずかしく、そして申し訳無くなった。
「でも何か、ちっちゃい綿飴の大群みたい」
誤魔化しの為、俺が言った。
甘い物好きの俺は、羊雲を見て、ふわふわの綿飴が沢山ある光景を脳裏に描いてしまっていた。
「あっ、そうだ!」
俺がパンッと手を叩く音が屋上に響く。
「もうすぐ神社の秋祭りじゃん。一緒に行こうよ!綿飴あったらいいにゃあ…って不二、何笑ってんの!?」
不二はいかにも可笑しげに、低く笑っていた。
「ごめん、英二は本当に甘い物が好きだね」
「今更何言ってんのっ!まぁ不二には解んないだろうけど…ッ」
言葉が途切れた。
――俺の唇が塞がれたからだ。不二のそれによって。
「そう、僕は辛い物が好きだよ。でもね」
不二の囁きが耳に流れ込んでくる。
「やっぱりたまには、甘い物も欲しくなる――」
首筋に指を伸ばされ、耳を甘い囁きでくすぐられ、俺の顔の表面はすっかり熱くなっていた。
そして、長いキスがやって来る。眠気にも近い感覚に襲われ、眩暈が降ってきそうだった。
「好きだよ、英二」
「…もう」
テニスコートで、ボールがラケットに打たれる聞き慣れた音が、やたらと遠くに聞こえた。
「あーあ、俺たち、グラウンド何周かにゃあ…」


END

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