夢の舞台へ

□8.未来へ―――。
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8.未来へ―――。(Side:Goro)

やっと想いが通じあって、嬉しくて何度も唇を重ねた。
玄関先だとか、そんなの全然考えずに。


「悪ぃ、我慢できなかった…」
やっと俺達がいる所を思い出した時にはもう何時間も経っていたような気もしたし、まだ1分程しか経っていないような気もした。
「僕もだよ…」
頬を染めて笑んだ寿也はとても艶やかだ。
見惚れていたら、寿也が急にしゃがみこんだ。
「と、寿?」
慌てて顔を覗く。
「ごめん、その…初めてだったから…」
腰砕けちゃった、と潤んだ目で、上気した頬で、恥ずかしそうに笑う寿也は本当に色っぽくて。
今度はこっちが骨抜きになりそうだ。
「…中、入ろうぜ。」
しゃがみこんだ寿也に手を差しのべる。
「…うん。」
差し出した手を、寿也はしっかり掴んだ。


結局、繋いだ手を離すことできなくて、どちらともなく指は絡み合った。
それが合図であったかのように口づけを交わし、それは次第に深くなって。
互いに貪るように舌を絡ませた。



「とし…大丈夫か?」
肌を重ねて、ぐったりと自分の右腕に頭を預ける寿也に声をかける。
「ん…」
頬を染めた寿也は、少しつらそうに微笑んだ。
初めての行為は手探りで、しかし性急だった。
十数年と溜め込んだ気持ちが一気に溢れ出たのだから、仕方ないとも言えるが。

「吾郎くん…好き、大好き。」
行為の最中、寿也は譫言のように何度もそう言った。
涙を流しながら。
眦を滑り落ちる涙に唇を寄せ、
「俺も。好きだよ、とし…」
と囁くと、寿也は俺の背にまわした腕にぎゅっと力をこめてきた。
その腕の温もりが、感じる体温が愛しくて、寿也が果てる時に、
「愛してる。」
って囁いたら、
「僕も…っ、愛してる…。」
って言って綺麗に微笑んだ。
今までで一番、綺麗な笑顔だった。



「…吾郎くん?何考えているの?」
眠いのか、細めた目で寿也が見上げてくる。
「んー?寿也可愛かったなぁ…って。」
頭を撫でながら笑いかけると、
「っばか…」
照れたように睨んでくる。
そういうところが可愛いんだけど、とはまた怒られそうだから言わないけど。
「とし、」
拗ねたように目を瞑る寿也に呼び掛ける。
「…なに?」
その目は言外にそろそろ寝かせてよ、と告げていた。
そんなことは気付かないフリで、ずっとずっと言いたかったことを口にする。
「とし、愛してる。これからもずっと、だから、…二人で一緒に、生きていこう。」
照れくさかったけれど、一番の願い。
じっと、寿也の反応を伺う。
寿也は虚を衝かれたように軽く目を見開き、そしてその目はみるみるうちに潤みだした。
「…ぼく、も、愛してる…!」
そんな寿也を、吾郎は愛おしむように、慈しむように、抱きしめた。



つらいことも、苦しいことも、乗り越えていこう。
今度からは、二人で。









後書き。
やっと終わりました!
前回からだいぶ経ってしまいましたが…
ここまでお付き合いくださりありがとうございました!

2011.06.02.THU 桜

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