夢の舞台へ

□7.重なる想い
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7.重なる想い(Side:Toshiya)

関係ない、の一点張りで拒絶した僕に、吾郎君は顔を歪めた。
ごめんね、とは言えなくて、思わず苦笑のような微笑みを浮かべる。
「…寿也」
傷ついたように震える声音に、胸がぎゅうっと締め付けられる。
「帰って、」
お願い、帰って。
これ以上拒絶の言葉を君に投げつけるのはつらいから。
そして、僕が好きなのは君だって言ってしまいそうだから。
だから、お願い、
「帰って…」
目線はもう逸らせないから、俯きかげんに吾郎君を見る。
「…帰れるかよっ!」
吾郎君は怒ったように叫んで。
「そんな顔してる奴放って帰れるわけねぇだろっ!」
気づいたら、吾郎君の腕の、中…
「や…っ!離してよ!」
なんで、なんでこんなこと…っ!?
「ずっと泣いてたんだろ?」
優しく撫でてくれる手が嬉しくて、痛い。
「泣いて、ないっ!離して…っ」
吾郎君の胸を押す手に力が入らなくなって…ぱたり、と手は体の横へ力なく収まる。
頬に、涙が伝った。
「ほら、泣いてる。」
微かに肩を震わせたのにさえ気づかれてしまうこの距離に、嬉しいはずの腕の中に、苛立ちを覚えた。
気づかれてしまったら、もう、隠していられない。
「…好き。」
震える手で吾郎君の服の裾を掴む。
「とし?」
怪訝そうに名を呼び、吾郎君は裾を掴んだ手に手を重ねてくる。
「僕は、吾郎君が好きなのっ!ずっと、ずっと前から…っ…」
重ねられた体温に嬉しさがつのる。
堪えきれずにまた涙が溢れてきた。
「…俺も、ずっと好きだった。」
聞こえた言葉に耳を疑う。
「…今、なんて…?」
嘘、吾郎君が僕を好き?
信じられない。
「だから、ここまで来たのも全部寿也が好きだからって言ってんの!」
ああ、夢ならどうか覚めないで。
このまま、幸せなままでいさせて…
「ほん、と…?」
小さくしゃくりあげながら問うと。
「信じられない?」
拗ねたような君の顔。
「だって、夢みたいだ。」
それとも本当に夢だろうか?
やけにリアルな夢。
「現実だよ…」
吾郎君が苦笑して、
唇に重なった温かい感触。
キスされてる、とぼんやり思って、吾郎君の背に手をまわす。
「…信じた?」
唇を離し、吾郎君は照れくさそうに、いたずらっぽく笑う。
「…うん、」
その笑顔にまた涙腺が緩んで、泣くのを堪えて笑おうとして。…失敗した。
あとからあとから涙が溢れてきて嗚咽を殺すことさえできなくて、声をあげて泣いた。
こんなに泣いたのはいつ以来だろうか、という程に。
「そんなに泣くなって。目ぇ腫れちまうぞ?」
背にまわされた手が癒すかのように背を撫でてくれる。
「だっ、て…うれし…っ」
ああ、うまく話せないのがもどかしい。
「とし可愛い…。嬉しいのは俺もだ。」
優しい手に、言葉に、涙は止めどなく溢れてくる。
目元をごしごしと擦る手が吾郎君の手のひらに包まれた。
「目ぇ傷つくって。」
苦笑した吾郎君に目を奪われていたら、目尻に口づけが降ってくる。
涙の跡を舌でなぞり、また唇に口づけが降ってきた。





結局僕らは玄関だというのも忘れて互いの唇を貪りあった。






――――――――――
後書き

あと1話で終わらないかもです…ι
最終話うまくまとめられる自信がない(-.-;)
まぁ、やっとくっつきましたよーって(*´∀`)
もう何がなんだかよくわからない文章で…
文才が欲しい…!←

では、お読みくださりありがとうございましたm(_ _)m
最後までお付き合いくだされば幸いです(*^v^*)

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