夢の舞台へ

□5.忘れられない。
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5.忘れられない。(Side:Toshiya)

酔い潰れていた、としか言い様がない。
こんな写真―――眉村と抱き合っているのを撮られる程に。
真相はたんに酔い潰れてしまった僕を眉村が家まで送ってくれただけ。
この時の僕は既に意識はほとんどなく、眉村に凭れかかったらしいのだが。
そこをたまたま通ったらしい記者に撮られたのだ。


吾郎君の結婚から7年、国が違うから会うこともなく、浮いた話一つなしにずっと野球に打ち込んできた。
野球は僕と吾郎君を繋ぐ唯一のものだと思って。
それでも、寂しくてつらくて仕方がない時、酒に溺れてしまった。
元から強くなかったし、プレーに影響がでても困るから呑む量は少ないのだけど。


「どうしよう…」
事実ではなくとも、イメージダウンになってしまうから。
「大丈夫だ、事実無根なんだから」
慰める様に薬師寺が言ってくれる。
一人だと不安だろうから、と薬師寺が来てくれたのだ。
いくら事実無根だと言ってもほとぼりが冷めるまでは眉村とは会わない方が良いだろう。
「ごめんね、迷惑かけちゃって…」
苦笑とも自嘲ともつかない笑みが零れる。
「これに懲りたら酒は控える事だな。」
苦笑され、忠告されてしまった。
「そうだね…やめちゃおうかな。」
呑んでも呑んでも、この想いを消すことなどできなかったから。
酔い潰れた夜には決まって、吾郎君の夢を見た。
ありえないとわかりきった夢を。
目が覚めては一人の自分に絶望する、そんな日々はもう終わらせよう。
何度も終わらせようとしてできなかったのに、簡単にできるわけないなんてわかってるけど。
「佐藤…」
物思いに耽ってしまった僕に薬師寺が遠慮がちに声をかけてくる。
深呼吸を一つして、
「…大丈夫。」
と笑ってみせる。
やめなくてはいけない事だから。
自分のために。
望みなんて1%もないこと、やめなくてはいけないから。
決意を固めかけた時。

トゥルルトゥルル…
無機質な着信音がした。
携帯のフリップを開いてみると。
画面に表示されていたのは。

“茂野吾郎”

たった今想うのをやめようとしていたのに。
なんでこのタイミングで…
ズルいよ、吾郎君…

「佐藤!出ないのか?」
携帯を開いて画面をみつめたままの僕を薬師寺の声が現実に引き戻した。
「あ、出るよ…」
通話ボタンを押し、恐る恐る耳にあてる。
『寿也!お前出んのおせぇよ!』
口を開く間もなく文句を言われた。
「ごめん。」
久しぶりに聞いた声に震えそうになる声をなんとか抑えて謝る。
『…大丈夫か?』
気遣うような声音に、視界が滲みそうになる。
「大丈夫、ありがとう。」
出なければよかったなんて今更もう遅い。
だったら早く切ってしまおう。
『ホントか?無理してるんじゃ…』
尚も気遣うような声に、
「本当に大丈夫だから…ごめん、ちょっと忙しいから切るね。」
言って、返事も聞かず電話を切った。
途端に、涙が頬を伝う。
「………っ、ぅ…」
声を押し殺して座りこんで泣き続ける。
声を聞きたくなんてなかった、と言ったら嘘だけど、ついさっき決めた事が全て無駄になりそうだ。
「なんてタイミングでかけてくるんだよ…っ!」
聞こえない相手に悪態をつく。
涙はやっと止まった。
「………」
薬師寺が無言で、いつの間に用意したのか、温かいタオルを差し出してくれる。
「ありがとう。」
ベッドに横になってそれを目に載せて、泣き疲れたのかうとうとした。
鍵がどうのと言っている薬師寺の声を薄れていく意識の中できいて―――。

そのまま僕は眠りに堕ちた。








―――――――――――
長い…(-.-;)
まとまらくて困る。
まとめられなくて、か(^q^)←

あと3話で終わらせられたらいいなぁ…(^_^;)

3月31日 桜

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