夢の舞台へ

□3.味方だから。
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3.味方だから。(Sied:Toshiya)

吾郎くんが結婚して僕が沈んでいたのを、眉村や薬師寺は気付いていた。
まぁ、高校時代から気付かれていたから当然かとも思うけど。
でも何度も
「大丈夫か?」
と心配そうに言われるのはちょっと居心地が悪い。
「大丈夫だよ、僕そんなにわかりやすい?」
というかわかりやすかったら今頃吾郎くんにバレていそうだけど。
「わかりやすいというほどではないが。」
「余程鈍い奴以外は気付くと思うぞ…」
「それってつまり吾郎くん以外にはバレてたってこと?」
どうしよう、隠せていたと思ったのに…
「大丈夫だ、話のネタとか、そういう程度だから。」
動揺した僕を安心させるように、眉村がくしゃ、と頭を撫でてくる。
「ん、ありがとう…」
その手のひらがあまりにも優しかったから、
「………ね、抱いて。」
思わず口走ってしまった。
眉村は唖然として、すぐに不機嫌な表情をした。
当たり前か…。
「…そういうこと、軽々しく言うな。」
軽く叩かれる。
ひきつった笑みが痛かった。
「ん、ごめん。」
ああ、本当、僕って最低。
「そうじゃなくて。」
自己嫌悪で俯いた僕の顔を上向かせ、
「つらくなるのはお前だ。」
真摯な瞳で、見つめてくる。
ああ、本当に。
「優しいね。」
今はその優しさが痛かった。
自業自得、かな。
「…眉村、佐藤。」
薬師寺が困惑した表情で声をかけてきた。
「お前ら俺の存在忘れてたろ。」
滅多にないふてくされたような表情に思わず、ふっ、と笑みが零れた。
「…笑ってろ。」
薬師寺が、苦笑する。
「俺達は味方だ。」
今度は薬師寺に頭を撫でられた。
「ありがと…。」
二人がいてくれてよかった。
ああ、だけど。
「二人とも、頭撫でるのやめてよ。」
子供扱いみたいで嫌、って言ったら。
「…ああ、悪い悪い。可愛いから、つい。」
少しも悪びれずに言われる。
まったく………、
仕方ないなぁ、なんて思った時、フラッシュバックした記憶。
あれは海堂の厚木寮だっけ…
『もう、頭撫でるのやめてよ。子供扱いみたいで嫌だ。』
『わりぃわりぃ。寿が可愛いから、つい。』
ああ、そうだ、あの時は人の気も知らないで、って、腹が立ったっけ。
記憶を呼び戻されて、不意に視界が歪む。
「…佐藤?」
心配そうに薬師寺が声をかけてくる。
「…ごめん、大丈夫。」
声が震えないように、俯いたまま応える。
戸惑った気配と、そのすぐ後に背に感じる温かい手のひら。
二人がいてくれて、よかった。
そう思いながら僕は嗚咽を殺して泣いた。






――――――――
あとがき。
長い(^q^)
書きたいこと上手くまとめられなかったらこうなった(-.-;)
こんなんで続けられるか心配ι

3月8日 桜

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