夢の舞台へ

□そばにいて。
1ページ/2ページ

「としぃー…」
扉が開かれるとすぐに寿也に抱きつく。
「ちょ、吾郎くん!?」
寿は慌てて引き剥がそうとするが、
腕ごと抱き締めているから身動ぎするのが精一杯のようだ。
「もう…」
仕方ないなぁ、と溜め息を吐き、抱き締め返してくれる。
「どうしたの?」
あやすかのように、ゆっくり、優しい手のひらが背を叩く。
「んー…寿切れ?」
すり、と頬擦りして答えた。
「っ…ばか。」
顔は見えないけど、きっと真っ赤なんだろうな、なんて思いながら、
「…リビング行こ?」
と囁く。
「なら離してよ。」
名残惜しく思いつつ、身体を離す。
すぐに寿は顔を背けてしまったけど
その頬が紅潮していたのは言うまでもない。

「何か飲む?」
俺をリビングに通すと寿はキッチンに立った。
「いい、サンキュ。」
断ると
「そ?」
それなら、とヤカンをコンロに載せた。
「寿!こっち来て!」
火を点けようとするのを阻み、呼ぶ。
「何?どうかした?」
ちょっと焦ったように、駆け寄ってくる。
「ここ、座って。」
座っていたソファーの隣をポンポンと叩く。
「…それだけ?」
それだけで呼んだの?と言外に言っている。
「ここにいて。」
何もいらない、
「寿がいるだけでいい。」
腕を引くと、呆れたように微笑み、隣に座ってくれた。
「ありがと。」
なんて、自分らしくないと思いながらも、寿の肩に頭を凭せた。
寿の体温が心地いい。
指を絡め、手を握る。
「大好きだよ、寿。」
囁けば、嬉しそうに笑う気配。
「…僕も。」
握った手が、ぎゅっと握り返される。
「寿…!」
抱き締めたくなって、押し倒して、のしかかる。
二人で寝るには狭いけれど。
お互いの体温の近さに、二人して笑いあった。




嬉しそうに笑った君の表情は堪らなく綺麗で。
ずっとそばにいてほしい、そう思ったんだ。






後書き。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ