夢の舞台へ

□またね、
1ページ/2ページ

『引っ越し…』
呆然、としか言えなかった。
(もう寿くんに会えない…)
それだけが気にかかって。
今は、寿くんの家に向かっていた。


インターホンを押すと、すぐに寿くんが出てきた。
「………」
「どうしたの?」
すぐには何も言わない吾郎に首を傾げ、問う。
「キャッチボールしようよ!」
吾郎はいつも通りを装った。
「いいよ。」
微笑み、寿也は下駄箱からミットを取り出した。

二人して三船リトルのグランドまでランニングした。
土手でしばらくキャッチボールをして、
休憩、と土手に座りとりとめのない話をする。
「…絶対野球選手になろうね!」
「うん!」
いつかバッテリー組もうよ!なんて、他愛のない夢。
「いいねそれ…寿くんが味方なら心強いよ…」
本当になればいい、そう思い微笑む。
「…指切りしようか、吾郎くん。」
唐突に、寿也が言った。
「えっ?」
驚く吾郎に何も言わず、ん、と小指を立てた。
つられるように、吾郎も小指を立てる。
そっと指が絡み合う。
(あったかい…)
ぬくもりに、不意に泣きそうになった。
「…約束。」
何もかもを悟ったような瞳が見つめてきた。
「…うん、いつか、きっと、…」
絶対。頷くと、絡み合う指をほどいて、寿也が微笑んだ。


約束、守るよ。
だから、また会う日まで、
「またね。」




後書き
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ