二人ぼっちのセカイノハテ

□Trick and Treat
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「久保ちゃーん、トリックオアトリート!!」
無邪気で可愛い笑みを浮かべた時任が、ん、と左の手のひらを上向きにして差し出してくる。
「…なにもないんだけど」
ハロウィンにお菓子を配る、またはねだる習慣なんて、日本には根付いてないし、そもそもそんな相手もいなかった。
「じゃあイタズラだな!!」
俺がお菓子なんて持ってないことを見越していたのだろう。時任がニヤリ、と笑うから。
「…どーぞ?」
灰皿に吸いかけの煙草を押しつけて、微笑みかける。 どんなイタズラをしてくれるのか、ちょっと楽しみ。どんなイタズラをし返そうかも。
「………やっぱヤメとく。」
敏感に何かを察知したのか、時任が僅かに足を引いた。やっぱり野生の勘ってすごいね…
「そ?ザンネン。じゃあ時任」
「おう?」
こっちからも、ね?その様子じゃあ、気づいてないね。
「Trick or Treat?」
「……………………なんもねぇ」
長い長い沈黙のあと、じりじりと後退りしながら、時任が言った。








「………じゃあ、イタズラ、ね?」
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