青い焔

□君が生まれた日。
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「誕生日ケーキがあんなんだとは知らなかったなぁ!」
寮に帰って、兄さんは興奮冷めやらぬ、といった様子で言った。
「そうだね…僕らはクリスマスと一緒にお祝いしてもらってたから仕方ないよ。」
着替えをする兄さんの後頭部を見ながら言って、僕は苦笑する。
正直、誕生日自体、認識が曖昧なのだ。
何かぼんやりとした印象、と言ったらいいのだろうか。
祝ってもらうのは嬉しい。
けれど、どうしても自分が生まれた日なんだという実感がわかないでいる。
「…雪男?どうかしたのか?」
ぼんやりと後ろ姿を見ていたはずが、いつの間にか兄さんが目の前で心配そうに見上げてきた。
双子の勘、とでもいうのだろうか。
兄さんは僕がちょっと暗い考えをしていると直ぐ見抜いてくる。
隠し通すこともできるのだけど、兄さんの澄んだ瞳に見つめられるとどうにも黙っていられなくなってしまう。
「ちょっと、ね。誕生日ってなんかぼんやりした印象なんだよね。」
苦笑と共に呟けば、わからない、とでも言いたげに兄さんは小首を傾げた。
「俺とお前が生まれた日、だろ?」
なんでもないことのように、さらり、と言ってのける兄さん。
でも、
「だって、ホントの誕生日じゃないかもしれないじゃないか。」
思わず口をついてでた言葉。
「そうだけど…」
困ったように兄さんは口を閉ざしてしまう。
僕も何も言えなくて、そのまま沈黙が続いた。
「…例え違ってもさ、正しい日なんかどうせわかんねぇんだし、それでもいつかは誕生日なんだから、俺たちの誕生日は12月27日ってことでいいじゃんか。」
つっかえながら、兄さんは言った。
その言葉に、少しだけ胸が軽くなる。
「そう、だね…」
曖昧に微笑んで、この話を切り上げようとしたら、胸に軽い衝撃がきた。
兄さんが抱きついたのだ。
「…雪男が生まれてくれて、よかったよ。お前と双子で、よかった。」
耳まで真っ赤に染めて、兄さんがぼそぼそっと呟く。
「だから、そんな寂しいこと言うなよな…」
その言葉と共に、背に回った腕に力がこめられ、ぎゅっと抱きしめられる。
「…うん、ごめん兄さん。…ありがとう」
生まれた瞬間から傍にあったであろう、この温もりがとても愛しい。

兄さんの温もりを感じていたら、考えもすべてゆるゆると溶けてしまいそうな、そんな錯覚を覚えながら、僕は兄さんの唇をそっと啄んだのだった。








後書き。
19話の誕生日ネタを見て…
雪男はちょっと考えすぎてしまいそうだなぁって思ったらこうなっていました←
燐はいい意味で考えなしだと思います。
こんなに早くに誕生日ネタ書くことになるとは思いもしなかった…
アニメスタッフさんやってくれますね…!←

ではでは、お読みくださりありがとうございましたm(_ _)m


2011/08/22 桜

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