青い焔

□その笑顔のために。
1ページ/1ページ

「兄さん…!」
脇腹から血を流す兄さんに駆けよる。
兄さんは痛みを堪えるような表情で薄く笑った。
「大丈夫だ。すぐ、治るから…」
兄さんの言う通り、傷口は次第にふさがっていった。
「はは…ホントに、人間じゃねぇんだな…」
兄さんは、治りの異常に早い己の身体に自嘲のような笑みを口元に浮かべた。
痛々しい笑みに、かける言葉を見つけられなくて、僕は無言で兄さんを抱きよせた。
兄さんの手がコートをきゅ、と握った。
その手が少し震えているのには気づかないふりをして、僕は兄さんの痛々しいその背をそっと撫でた。

兄さんを守ると、神父さんの墓標に誓ったのに、僕は守れなかった。
魔神の落胤と責められ、忌み嫌われる、そんな兄さんの心を守ることすらできない、自分の無力さに拳を握った。
「…雪男、」
撫でていた手が結ばれたのに気づいたのか、兄さんが僕の肩を押し返してくる。
握ったままの拳を兄さんの掌が包んでくれる。
「…俺のせいじゃねぇじゃん、って思わなくもねぇけどさ。」
握られた僕の拳を開きながら、兄さんはゆっくり口を開いた。
「…お前さえ味方ならいいかな、って思うんだ。」
俯いて、兄さんは呟いた。
するり、指が絡められる。
「…兄さん」
呼べば、微かに動く指先。
その指先に、そっと口づけた。
「味方でいるよ。」
囁いて、顔を覗きこむ。
「大好きだよ、兄さん。」
不安げに揺れる瞳が安心したように細められ、兄さんはいつもの笑顔を見せてくれた。

「サンキュ。」

向けられる笑顔は、僕にとってかけがえのないもの。
この笑顔を守るために、僕は戦うと決めたんだ。








―――――――――
後書き。

なんか前のと内容が似たり寄ったりな…
漫画で燐が大丈夫、って言ってる後ろで雪男がちょっと目元を拭うようなかんじだったのがすごく気になります。
やっぱり燐可愛いよ!←

では、お読みくださり、ありがとうございました!

11年6月26日 桜

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ