雷の煌めき

□ホワイトデー
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3月14日、ホワイトデーの朝。
「おはよう、鬼道。」
「ああ、おはよう、豪炎寺。」
通学路で豪炎寺と鬼道は挨拶を交わし、そのまま並んで歩いた。
心なしか、二人ともそわそわしているようだ。
「鬼道、円堂に…お返しって、買ったか?」
「あ、ああ…豪炎寺は?」
「買った…が。」
「…どうやって渡そう?」
「それを俺も考えていたんだ…」
どうやら二人ともどうやってお返しを渡すかについて考えていたらしい。
「気負いなく渡せばいいさ…」
「そうだな…」
自分に言い聞かせるように鬼道が言い、豪炎寺も頷いたのだが。
((気負いなくが一番難しいんだがな…))二人の内心は一致していた。
「ああ、そうだ。豪炎寺。」
「なんだ?」
「いつもありがとうな。」
思い出した、というふうに鞄から綺麗にラッピングされた箱を差し出す。
「ああ、サンキュー。俺も…」
受け取って、豪炎寺も鞄をあさる。
「ありがとう。」
受け取って、
「…こうやって渡せばそれでいいのに、な。」
鬼道は呟いた。
「ああ…」
二人して頭を抱えたくなるのだった。


結局一日中悩み続けて、放課後。
「部活行こうぜ!」
二人の悩みなど知る由もない円堂は無邪気に笑う。
「ああ…」
「行こうか。」
先を歩く円堂のあとに二人は続いた。
「そういえばさー丁度一ヶ月前、ここでグリコしたよな〜」なんでもないように円堂が言う。
「そうだな…」
頷き、二人は渡すならこのタイミングだ、と意を決した。
「円堂!」
思い切って鬼道が声をかける。
「ん?」
踊り場まで降りて、円堂は振り向いた。
「い、いつもありがとう、な…!」
「お、俺からも…」
僅かに頬を染め、二人はラッピングされた箱を差し出す。
「おう!サンキュー!」
気負いなく、それはそれはあっさりと、円堂は差し出された箱を受け取った。
「高そうな箱だなぁ」
などとのんきに箱を眺めている。
もしかして、と思ったのか、
「円堂、今日何の日か知ってるか?」
と豪炎寺が尋ねたが。
「何かあるのか?」
逆に訊き返されてしまった。
「…ホワイトデー、バレンタインのお返しを渡す日だそうだ。」
呆れたように鬼道が言う。
「へぇー。てか二人ともなんか顔赤い?」
納得したように頷き、二人の顔を見て円堂は小首を傾げた。
「そんなことはないと思う、ぞ…!」
「は、恥ずかしいとかそういうんじゃなくてな…」
しどろもどろに言い訳をする二人を見てくすっと笑うと、
「部活、行こっ!」
円堂は二人に手を差し出した。
「っ…、ああ」
「…行こうか」
可愛いとか思った自分を叱責して、二人は差し出された手に自分の手を重ねたのだった。









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