雷の煌めき

□ちよこれいと。
1ページ/2ページ

「あ!教科書忘れた!」
部活に行こうと、階段を1階まで降りきった時、円堂が思い出したように声をあげた。
「先行くぞ?」
豪炎寺が声をかける。
「え、待って!」
慌てたように、円堂が引き留めた。
「どうした?」
鬼道が怪訝そうに尋ねる。
「や…えっと、一緒に来てほしいかな…なんて…」
答える円堂は目が泳ぎまくっている。
何かを企んでいるのか、と思ったけれど、二人は
「いいぞ。」
と頷いた。


「そういえば今日ってバレンタインなんだな〜」
2階への階段を上りながら、何気無く、を装い、円堂が言った。
「そうだな。」
豪炎寺も鬼道も、興味無さげだ。
「チョコレートと言えば…グリコって小さい頃しなかったか?」
一段上の円堂が振り返る。
「いや…俺は最近夕香に教わった。」
「俺も最近春奈に…」
流石、お坊ちゃんは世間知らずだ。
「え!?やった事ないのか?」
円堂が驚く。
「ああ…」
知ってはいるんだがな…と二人は決まり悪そうな表情。
「そっかぁ…じゃあ、今からやろうぜ!」
言うと、円堂は踊り場まで階段を駆け上がった。
やれやれ、と二人もあとに続く。
円堂はきっとこれがしたかったのだろう、と二人は納得したのだった。
「「「グーリーコっ!」」」三人の声がそろう。
「やった、ち、よ、こ、れ、い、とっ!あがりっ!」
丁度、3階につき、円堂が嬉しそうにブイサインを作る。
「もういいか、」
と、二人も追いかけようと一歩踏み出す。が、
「ちゃんと最後までやれって!」
と円堂に止められる。
部活があるのに…と、思ったが、サッカー大好きな円堂が珍しく忘れているらしい。
仕方ない、と二人だけで続ける事にしたのだった。


「ぐ、り、こ。…あがり…!」
なかなかゴールできない勝負を制したのは鬼道だった。
「二人とも!」
豪炎寺が追い付いたところで、円堂が鞄から何か取り出した。
「ハッピーバレンタイン!」
差し出されたのは、可愛くラッピングされた、円堂らしい、サッカーボールのチョコレート。
「あ、ありがとう。」
「ありがとう…」
バレンタインは女子から男子、のはずだが…という疑問はこの際無視して、二人は礼を言う。
「二人とも大好きだぜ!」
ぎゅう、と円堂は二人に抱きついて。
二人は戸惑いながらも、円堂の頭を撫でた。







あとがき。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ