雷の煌めき

□キライキライ、…大好き。
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「……うぅ…わかんないよぉ……」
開始1分、あたしは既に音を上げた。
「こんなのもわからないのか…」
ぺたん、と机に腕を投げ出したあたしの横から呆れたような声が降ってくる。
「だってぇ…数学苦手なんだもん。」
ってか嫌いなんだけど。
とは言え、流石にこのままではまずいのだ。
だからこそ、こうしてお兄ちゃんに見てもらってるんだけど。
「…これは、∠ABC∠DEFだから、△ABC≡△DEFで…」
お兄ちゃんの教え方は先生よりずっと分かりやすい。もういっそ先生の授業放棄してお兄ちゃんに教えてもらおうかなどと考える。
「…聞いてるのか?」
ボーッと横顔を眺めてたあたしへ向き直りお兄ちゃんが問うてくる。
「き、聞いてたよ!」
焦るあたしに、お兄ちゃんが、
「なら、解いてみろ?」
と意地悪に笑う。
「…はい。」
今更聞いてなかったと言えるわけもなく。
あたしはまた、数学と格闘を始めた。


「…終わ、ったぁー!!」
最後の問題を教えられながら解き終わって、思わず叫んだ。
図書室だったから、小声だったけど。
「…ふう、お疲れ。」
机に突っ伏したあたしの頭を、お兄ちゃんが撫でてくれる。
「うん、お兄ちゃんありがとー。」
ホントに分かりやすかったし、根気よく教えてくれたし。
「って事で明日は理科教えて?」
目線を合わせ、頼んでみる。
「…お前な……。…仕方ないな。」
呆れ顔をしても、お兄ちゃんは頷いてくれた。
「ありがと、お兄ちゃん大好き。」
流石に公共の場だから抱きつかないけど。
「ハイハイ。」
いつもの如く軽く流されたけど。
優しいお兄ちゃんが、大好きなんだよ、あの時から。
数学も理科も大嫌いだけどね。
お兄ちゃんが一緒なら、数学も理科も、大好き…かも?





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