雷の煌めき

□お泊まり。
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「「お邪魔します。」」
豪炎寺と鬼道が声を揃えた。
「いらっしゃい」
台所から円堂の母親が顔を出す。
「三人とも泥だらけでしょ?お風呂出来てるからどうぞ。」
「「ありがとうございます。」」
またも、豪炎寺と鬼道が声を揃える。
「二人とも、こっち。俺の部屋に荷物置いて。」
階段の前から、円堂が呼んだ。


ガシガシと円堂が乱暴に髪を洗うので、
泡が窮屈そうに浴槽に入る豪炎寺と鬼道に飛ぶ。
「…円堂、もう少し静かに、というか穏やかに洗えないのか?」
たまりかねて、豪炎寺が声をかけた。
「ん?あ、ゴメン、飛ぶか?」
悪びれずに円堂が言う。
「…俺が洗う。」
そう言って豪炎寺は浴槽からあがると優しく髪を洗い始めた。
「ふぁー。気持ちいー」
円堂がふにゃ、と気の抜けたような表情をする。
「手慣れてるな。」
感心した様な鬼道の問いに、
「よく夕香の髪を洗っていたからな。」
と懐かしげに返す。
「最近では一緒に風呂に入るのを嫌がって…」
((そりゃ嫌だろう…))
二人が内心思った事など知る由もない豪炎寺は、ひたすら寂しがっている。
「おーい、豪炎寺ー?」
感傷に浸る豪炎寺に円堂が呼び掛ける。
「すまない、浸っていた。」
どうやら自覚があるようだ。
「まあいいけど…髪、もう流していいかー?」
うずうずしたように、円堂が問う。
「ああ…いや、俺が流そう。」
先程の円堂の洗い方が不安になり、豪炎寺が申し出た。
そうしてやっと風呂からあがったのだった。
夕食も終わり、そろそろ寝るか、となった頃。
「母さんが和室に布団敷いてくれたって!」
円堂の部屋でサッカー談義をしていたところ、円堂に呼ばれた。
和室に移動すると、布団がぴったりとくっつけて敷いてあった。
なんだか気恥ずかしくて、豪炎寺と鬼道が黙り込んでいると。
「俺真ん中!」
ぼふんと円堂が布団に潜り込んだ。
両側に二人が並ぶ。
「おやすみ!」
「ああ。」
「おやすみ、円堂。」
真っ先に眠りに堕ちた円堂の手を、両側の二人がそっと握った。



―――おやすみ、
明日も、その元気な声を聞かせて。



『サッカーやろうぜ!』






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