花園

□空の太陽
1ページ/2ページ

空は一瞬一瞬で違う色をする。
そう聞いたのはいつであったか―――――



「さーんぞっ!」
明るい声が呼んでくる。
仕事の合間に一服していた夕方の事だった。
だいぶ傾いた陽が室内を朱く染め上げている。
「夕日見に行こう?」
腕に悟空がしがみつく。
「一人で行け。」
と言うと、すぐに落ち込んだ表情をする。
すごすごと扉に向かう背が少しおかしくて。
「どこへ行く?」
と声をかける。
悟空は振り返り、キョトンとした顔をしている。
「夕日を見に行くんだろう?」
窓枠に足をかけると「うんっ!」
嬉しそうに悟空が後に続いた。

「空って面白いよな。毎日毎日違う表情(いろ)をしてて。」
三蔵の胸にもたれて、悟空が言った。
悟空は寒いから、と言って背後から三蔵に抱き込まれていた。
もうだいぶ陽も沈み、反対の空には一番星が輝いている。
「そろそろ戻る?」
首を後ろに向けて、悟空が問うた。
その唇に、キスをおとす。
すぐに顔が赤くなった。
「っいきなり、なに…!?」
するりと腕のなかから抜け出される。
本当に…。
笑ったり、泣いたり、照れたり…。
よく表情を変えて、
まるで。

「…空みたいだ。」

思わず、呟いていた。
先を歩いていた悟空が振り返る。
「なに、…、」
尋ねかけ、悟空がハッと息を飲んだ。
訳がわからなくて、
「何だ?」
と問うが悟空は
「何でもない。」
と嬉しそうに笑うだけだった。

…違うな。
空みたいに、くるくると表情を変えるけれど。
最後にはすべてを照らすような笑顔を見せて。
輝いて。

『…たいようみたいだ』

誰かが――悟空が、言ったような気がした。







後書き
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ