蒼水の零
□アスファルトに咲く恋桜
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ゆっくりと扉を開ける。
「遅い。」
第一声にそれがくることは目に見えていた。
長い髪をたなびかせながら、ズカズカと歩いて来る。
「一体どこで何をしていた。まさか寝坊ではないだろうな。もし寝坊だと言えば問答無用で……」
ヤバい、図星だ!!
「あの……寝坊です。」
途端に目つきがキツくなる。
「まあまあ、別にいいじゃんお姉ちゃん。こうやって作戦には間に合ったんだし。」
「作戦?」
悠哉がそう聞くと、そのあまりにも存在自体が威厳に満ち溢れている女性がこたえる。
「ああ、今から大事な作戦がある。そのために今日お前を呼んだのだ。」
どうせディアース絡みのことなのであろう。
この生徒会副会長と書記の超美形な姉妹コンビと一緒に居れるのはありがたいことなのだが、作戦と聞くとその天から授けられたありがたみはサラサラと消えていってしまう。
「なにを複雑そうな顔をしている?いいか、一度しか言わないからよく聞け。」
そう言われたので悠哉は一言もこぼさないように耳をグリグリとほじくる。
麗がその瞬間ものすごい勢いで睨んできたので、ゆっくりとその手をもとにもどし、きをつけ!!をして話を聞くことにした。
「今回は作戦と言っても具体的には私もその内容を完全に把握してあるわけではない。」
はい!?
悠哉が不思議そうな顔をするが、麗はそのまま話を続ける。
「昨日の朝フランに会いに行ったところ、今日の昼頃に向こうの世界で小規模な村がリガースの大群に襲われるというのを察知したらしい。現段階では情報が少なすぎるが、かなりの確率で今日中にこの町の周辺で何らかの災害が起こる。」
災害……か。
この間は火事多発事故であったが、今度はもっとやばいのかもしれない。
やはり話を聞くとそれなりに緊張してくる。
だが、始まりの時は彼らにいきなり忍び寄る。