蒼水の零

□零の覚醒
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《さぁ、その石を使え…》

(使えって言ったってどうすれば……よし、こうなったら…)

悠哉は急激に水を蹴り上げ猛スピードで半魚人へと向かって泳ぎ初めた。そして手を伸ばせば届くという距離で青く光る石をもう一度手の中で握り直した。
そしてヤツの腹部をめがけて思いっきり殴った。

「いっけぇぇーー!!」


「ドスーン!!」


手応えはあった。見ると半魚人の腹には拳一つ分の大穴が開いており、死んでしまったのかヤツはゆっくりと沈んでいった。

(沈んでいった先にあった神殿のような遺跡のような海底都市が俺の目にはとても綺麗に写った……)
「ザッパーン」

水面から顔出すと同時に大量の酸素を口の中へと放り込んだ。

やっぱり外の空気はいいなぁ。


ゆっくりと地面を踏みしめる。

そういえば、さっきのはなんだったんだ。

いきなり青い光に包まれて……実は夢でした、なんて……《そんなわけないだろう》


「うゎ、石が喋った!」


《石では無い…私の名はシエルだ。ルナ・シエル。》


(シエル…。外人か…。しかも石だ。いやいや、ありえねぇ。気持ち悪いなぁ。捨てるか。)


《無礼もの!!私を捨ててみろ。即刻、死刑だぞ。》

(うゎ、なんか俺の考えお見通し…まずい。)


「そんな訳ないでしょ。そんな事言うはずないじゃないですかぁ。」

《言っておくが、私とお前は記憶媒体の一部を共有している。お前の考えなどお見通しだ。》

(なに、バレてた!?そそっそうだ。話題を変えよう。)

「そういえば、さっきの魚みたいなやつはなんだったんだよ。」
《魚ぁ?あぁ。リガースの事か。》

「リガース?」

《そう、リガースとは人の心の闇から生まれた魔物だ。》

「魔物…心の闇…」
《そう、いわば生き霊のようなものだ。ヤツらは知識を持たず、目の前の物を全て破壊する。人も…村も…かつてそこにあった都市も……》

(都市……そうか、湖の中にあった神殿みたいなのはヤツらに滅ぼされた都市だったのか……)
《その通りだ……》
(あ、そうだった。考えてる事分かるんだったっけ。)

「ザッパーン!!」

「なに、さっきの!!」

なんと会話をしていると先程の怪物が腹に穴を開けたまま水面から勢いよく飛び出してきた。

「またさっきみたいに返り討ちにしてやる。」
と悠哉は意気込み、走りだそうとしたが、シエルの言葉によって止められた。

《待て、お前が今からやろうとしている事は全くもって無意味だ。》

「なんだとっ!?」

《まぁ、落ち着け。この石を握ったまま殴るよりもっと効率がいい方法がある。》

「どうするんだよ!?」

もう敵は目の前まで迫っているのだが…

《目を閉じろ。そしたら軽く深呼吸だ……よし、その調子だ…》

「ガァァァァー!!」
かなり敵が近いのが聴覚から伝わってくる情報だけで分かる…

《今だっ!!私の名を呼べ!!》


悠哉はわずかな深呼吸の間にシエルから記憶を読み取っていたので今からなにをすればよいのか、すぐに分かった。
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