蒼水の零
□未来を遮る影と陰
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「ハァ…ハァ…そろそろ厳しいぞ。」
肩で息をしている悠哉が軽く呟く。
「そうですねぇ……どうしましょう…ハァ…ハァ…」
悠哉と背中合わせの状態である由衣も、身体的に限界に近づいているのか体を激しく揺らしている。
周りには緑色の体をしている全長1メートルほどの獣がいる。
その手には棍棒のようなものを持っていてる。
《すごい数のトロールだな。だいぶ倒したがまだ20…いや…30はいるぞ。》
シエルもこの状況に嘆いているようだ。
「っ!!由衣!!横から来てるぞ!!」
左側を見るとトロールが数体向かって来ていたので悠哉は由衣に注意を促した。
すると、由衣は手を前に差し出し、叫んだ。
「業火の紅弓!!トーマ・グリース!!」
由衣がそう言うと、赤色に染まったボウガンのような重量感のある弓を胸元から取り出した。
「貫け!!フレイムロア!!」
1本の鋭い炎の矢が一直線上にならんだリガース達を次々と貫いていく。
だが、他のリガースも次々とあらゆる方向から襲ってくる。
「くそっ!!アクアスパイラル!!」
水のカマイタチが周りのリガースを切り刻む。
「ハァ…ハァ…シエル!!これじゃキリがねぇ。何か手はねぇのか?」
悠哉も由衣も立っているのがやっとのようだ。
《また私に聞くのか……少しは自分でも考えろ!!》
俺も考えてるよ、と悠哉が頭の中で言ってることがシエルに伝わってくる。
《お前はまだ未熟だ。零の力を全く開放出来ていない。あの麗とかいう女が先ほど言っていた言葉を思い出せ。》
悠哉はシエルにそう言われ、考え込む。
「さっき言われたこと……?」