08/31の日記

23:50
一方通行の恋愛事情20
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side:リザ・ホークアイ


私は、医務室から走り去る大佐の後姿を呆然と見送る事しか出来なかった。
ヒューズ中佐の結婚式に大佐が贈った花が、『失恋』の意味を持つ白いトルケスタニカ。
花言葉に詳しい大佐が知らないわけがない。
「・・・ではつまり、マスタング大佐はヒューズ中佐に失恋したのでその花を贈ったということですな?」
「黙れ、言わんでも分かる!!」
「アイ・マム!!!」
アームストロング少将が、少佐の足をまた思い切り踏ん付けていた。
少将が持っていた時に何も言わなかったのは、きっと花言葉を知らないで持ってきたんだと分かっていたのね。
「じゃあ、ロイの奴あの頃から俺に惚れてたって事・・・だよな?」
驚いた顔から、嬉しそうな笑顔に変わったヒューズ中佐を見ているのが悔しかった。
思わず中佐を睨むと、彼は勝ち誇った笑顔を見せた。
「ごめんな、リザちゃん。これで俺達両思いって事が確認されたし、やっぱり俺の1人勝ちだな」
「・・・ッ」
言い返せなくて、私は俯いた。辛くて涙が滲みそうで、唇を噛む。
こんなに、あの人が好きなのに。あの人の為なら、どんな事だって出来るのに・・・!


「―――何が勝ちですか、この鈍感親馬鹿中佐ァァァ!!」


「あいだ―――――っ!?」
私が驚いて顔を顔を上げると、そこには壊して外した扉をヒューズ中佐に上からぶつけるファルマン准尉の姿が。
「ファルマン!?お前ドアどうやって壊したんだよ、火事場の馬鹿力か!?」
ブレダ少尉が驚いているけれど、それ以上にドアをぶつけられた中佐が驚いたみたい。
咄嗟に避けられずにドアを突き破って頭が飛び出しハマっている光景は、まるでコント。
「何するんだお前!?」
「貴方こそ何ですか!?人に偉そうに説教しておきながら、自分が1番傍に居たのに何も気づいてないじゃないですか!」
「何だと!?いや、お前あれだけやり合った割に元気過ぎねぇか!?」
「そんな事はどうでも良いんです!今更分かって両思いで1人勝ちだ?ふざけないで下さい!!」
もしかして、・・・ファルマン准尉キレてる?
でもキレても敬語になってる所が彼らしいといえば彼らしい。
「ヒューズ中佐、その通りッスよ」
その時、ハボック少尉も中佐の前に行き厳しい顔で続けた。
「例えば、大佐が中尉と結婚して子供出来たら嬉しいですか?」
「はあ!?嬉しいわけねーだろ!!」
「私はとても嬉しいけれど」
「中尉例えですから!それはともかく、それでも大佐がアンタを「愛してる」って言ったらそれで満足ですか?」
「そんなわけ・・・」
「そうですよね、嬉しく無いですよね。俺がその立場でも嬉しくない。それがどれだけ本気でも」
「・・・ッ!」
中佐が、言葉に詰まった。


「―――俺は、あの人を全て懸けて愛せます。アンタに大佐が失恋したなら、俺に恋させてみせます。あの人を幸せにします」


その時のハボック少尉の表情は、ボイン追いかけてたりビンタされてたりする時と違っていた。
「―――糸目、ハボック、良く言ったあああ!!」
「ぐあっ!?」「どえっ!?」
その格好良いシーンを突如として壊したのは、アームスロング少将の跳び蹴りだった。
蹴りは見事にファルマン准尉の頭にクリティカルヒットし、隣に立っていたハボック少尉も巻き込んで壁に激突した。
「私も同意見だ!糸目、お前を絞めるつもりだったが中々良い展開になったでこの一発で許してやる!」
「一発が会心の一撃ですけど!?ハボまで吹っ飛んでますがこれでまだ軽いんですか!?何か八つ当たりっぽいし!」
「いってて・・・はっ、ファルマン無事か!?」
「・・・ブリッグズの峰より・・・少し、高「「無事じゃねぇぇ!!」」
「ファルマ―――ン!しっかりしろおおお!ここは東方司令部だ帰って来い!!」
「それはお前の未来の上官の最期の台詞だ!フライングしてるから!お前が使うな!」
ハボック少尉とブレダ少尉が大騒ぎしている。
それを全然気にしない様子で、少将は中佐に斬りかかった。
「覚悟しろマース・ヒューズ!!」
「うおおっ!?」
風を斬る音と共に中佐の引っ掛かってたドアが綺麗に真っ二つになった。
反射的に受け止めたらしいナイフがポッキリと折れている。
「ホークアイ、来い!」
「―――え?」
見れば、少将が私の方に振り向いていて手を上げている。
「何を腑抜けた面をしている。貴様もマスタングが好きなら、そんな所でボサっとするな!」
「アームストロング少将・・・」
「勘違いするなよ、ライバルが居ないとつまらないからな!」
頭の中を、“昨日の敵は今日の友”という言葉がよぎった。
「・・・ありがとうございます」
そうですね、諦めちゃ駄目ですよね。あの人への想いだけなら誰にも負けないから。
「ちょっ、リザちゃんそれ忘れてきたんじゃ・・・!?」
「スペアがありますので」
「嘘ォ!?」
「ヒューズ中佐、覚悟して下さい。これは痛んだ大佐の綺麗な心の分と、私達の怒りと宣戦布告です」
私は中佐に照準をしっかり合わせて―――思いっきりバズーカの引き金を引いた。


→大地さんのサイトに続く(記念すべき20話目がこんなのですみませんでしたあああ!)

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