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□部下がサンタクロース
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【部下がサンタクロース】〜その@・伝わるどころか、掛け離れた〜SIDE:ジャン・ハボック


※今回は完全にハボック→ファルマンです。







突然だが、今俺は片想いの真っ最中だ。
出来ることなら、次のクリスマスはこの片想いの相手と両思いになって一緒にケーキでも食べたい。
だが悲しい事にサンタクロースはこの願いを叶えてくれそうになく、この片想いは今後も継続する見込みだ。
何故ならこの片想いの相手は、俺の事を恋愛対象としてこれっぽっちも見てくれてないからだ。
けどまあ、仕方ないと言えば仕方ないんだよな。今まで散々色んな女(※特にボイン)に惚れていたこの俺だ。
それが急に男に、しかも部下に惚れているとは思わないだろう。いつまで経っても平行線だ。

「あーあ、どうにかならねぇかなぁ・・・」
「何がですか?」
「うおっ!?」

机に突っ伏したまま言った言葉に返事が返ってきて驚いた。
顔を上げると、少し背を丸めて俺の顔を覗き込むファルマンと目が合った。
そう、こいつが俺の絶賛片思い中の相手だ。

「驚かせてすみません。最近ずっと、悩んでおられますね」
「え、分かるか?」
「分かりますよ。溜息ばかりついているじゃありませんか」

あー、やっぱ溜息ついているか。
カレンダー見ては溜息、クリスマスの商品を店の前で見ては溜息だったからな。

「お役に立てるかどうかは分かりませんが、この私で良ければ相談に乗りますよ」

俺は今日夜勤だが、こいつは違う。
話を聞くためにわざわざここに来たって事だから、イイ奴だよな。
それに部屋には俺達しか居ないから、悩み事を打ち明けるのには絶好のシチュエーションだ。
けど悩み事の中身が中身なだけに、本人は相談出来ねぇよなあ。

「さては、恋煩いですか?」
「ああ、当たりだ」
「私の得意分野ではありませんが、話すとスッキリする事もありますよ」

まあ、名前出さなきゃ話しても良いかな。
それにこの話を聞いてもしファルマンが何かリアクションを見せてくれたらなんて淡い期待をしてみたり。

「・・・今好きな奴が居るんだけどさ、ちょっと色々難しくて」
「どう難しいのですか?」
「凄ぇ圏外なんだよ。携帯で言うところの、電波1本も立ってないくらい圏外」
「この世界携帯電話無いと思うのですが」
「例えだ、例え。とにかく、そいつは俺の事全然恋愛対象として見てくれてないんだよ」
「それならば、いつものように気持ちを伝えて見てはどうですか?」
「それは無理だ。多分信じてもらえない」
「そんな弱気な少尉、らしくないですよ」

そうだよな、らしくねぇよな。けどこればっかりは無理だ。言ったら最後これから先そういう目で見られるのが辛い。
やっぱり脈無しなんだな。だってお前はこの話を聞いて一生懸命俺の為に悩んでくれてる。
どうする、最大の問題を言っちまうか?言ってこいつがどんな反応をするのか見るか?

「今回は今までと違う大きな問題がある」
「大きな問題・・・?」
「ああ。俺の今惚れてる相手・・・男なんだよ」
「え?」

うっわ、フリーズした!やっぱ引いたか!?ドン引きしたか!?

「有り得ないだろ?」
「いいえ、驚きましたが否定はしませんよ。それだけの理由があっての事でしょう」
「お前やっぱ優しいな」

そんな事ありませんよ、と笑う姿に胸が痛い。お前が好きなんだけどなあ、伝わらないかなあ。

「同じ男で、最初はこんな風になるなんて思ってなかった。凄ぇ近くに居るけど、あいつとはただの仲間のつもりで・・・」

あんまりにも真剣に俺の話を聞いてくれるのが嬉しくて、俺はついつい色々話してしまった。
言い過ぎたかも、と気付いたのはファルマンが妙に深刻な顔で手を口元にやって考え込んだ時だ。

「何かあいつが可愛く見えてきて・・・ッ、ファルマン!?」

もしかして、バレた?血の気が引いたが、急に手を握られて心臓が飛び出るかと思った。

「ハボック少尉・・・、1人で悩んで辛かったんですね」
「え?ああ、うん、辛いな」

表情は真剣そのものだ。逆に俺が緊張してきた。

「大丈夫です、微力ながら今日からは私が少尉の味方です」
「へ?」
「精一杯、恋が成就するように頑張りますから」
「いや、頑張るって言っても相手がな・・・」
「名前が出なくても、その思い人が誰なのか分かりました」
「!?」
「少尉は―――」

やっぱりバレたのか!?それにしちゃ話が何か噛み合ってないような?





「―――ブレダ少尉が好きだったんですね」





そうきたか―――――!!いっそバレてくれる方が良かった!!
凄ぇ誤解なんだけど!確かに男で近くに居て仲間だけど!!違うんだよあいつは親友!
確かにこの話の材料だけならあいつが可能性としてはありそうだけど、お前自分候補から抜いただろ!!

「何でそう思うんだよ!?」
「大佐や中尉なら“あいつ”とは言わないでしょう」
「確かに!」
「曹長なら可愛く見えて、というより可愛いに分類されると思いますので、消去法でブレダ少尉しか残りません」

だからお前は!?何で最初からお前が抜けてるんだよおおお!!

「違うぞファルマン!俺は!!」
「隠さなくても大丈夫です。これでも口は堅いですから、心配しないで下さい」
「隠してない!だから!!」

心配の方向性が違う!!そう、言いたかった。けど真剣に俺の事を考えて見詰めてくるのが嬉しくて、思わず頷いてしまった。
我ながらやっちまったと思う。これは偉い事になったと思いながら、「秘密です」という言葉の響きに妙にうっとりしちまった。
ああ、ごめんブレダ。何か面倒な事に巻き込んだかも・・・っていうか巻き込んだ。
クリスマスどうなるんだろうとかいう心配より、この問題をどうするべきかと手を握ったままぼんやり考えていた。
まるでファルマンが恋のキューピットっていうか、時期的にサンタクロース?
あわてんぼうのーサンタクロース・・・じゃなくて、これいじゃ勘違いのサンタクロースだろ!!




【それほど長くならない予定ですが、続きます】
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