□32.水姫〜藍〜
3ページ/11ページ



「準備良し…っと」


いつもの眼鏡を掛け、手には小さな手提げと お土産のお菓子。

お菓子は昨日、たまたま作ったパウンドケーキ。

銀さんは甘いもの好きだから、きっと食べてくれる。






「行ってきます」


誰に言う訳でもなく、癖で言ってしまう。

返事がある筈ないと分かっているけど、やはり虚しい…。




独りで居ても虚しさが募るだけだから、早く出かけてしまおう…。




いざ、万事屋さんへ!




…と意気込んではみたが、玄関に立てかけてある紺色の細長い物が視界に入り、歩き出そうとする足を止めた。



「傘…」



あの日、沖田君から借りた傘。


どうしよう…。
返さなければね。
分かってるよ?
分かってるけど…

どうやって返せば良いのか…。



う〜ん…と頭を捻り考える。










あ、閃いた。




名案とばかりににんまりし、意気揚々と家を出る。


手には藍色の傘を携えて。


.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ