conclusion
□はーとびーと
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毎日のようにあのたどたどしいギターを聞いていると、そうは思えない。
でも、初めの頃よりは上達してると思わなくもない。
「そういえば、なんで幸彦くん急にギター習い始めたんですか?」
ずっと不思議だった。
ある日突然ギターケースを担いでバイト先にやってきた。似合わないわけじゃないけど、不思議でしょうがなかった。
「あーそれは……」
苦笑から、更に困ったような顔になって神田さんは言い淀んだ。
そんな様子を見ると尚更経緯を聞きたくなってくる。私は真面目な顔で神田さんをじっと見つめた。
神田さんはこのシチュエーションに弱い。何か隠し事をしてても、こうすれば大抵の場合すぐに折れて話してくれる。
「えっと……それはー」
もう一押し。目に力を込める。
ところが。
「男の友情だから秘密!」
今まで聞いたこともないような言い訳で逃げられてしまった。