conclusion
□はーとびーと
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*3* 想いを乗せた歌
今日も私は、神田さんのギターを聴く。
あの夕涼みライブ以来、それまでのちょっとしたギクシャクも無くなって、今は以前のように楽しく過ごしている。
しかも今日は幸彦くんがレポートの提出期限に追われて休みなので、堂々とスタジオの中で、椅子に座って聴いていることができる。
ただ、あの時から変わったことは、スタジオに置いてあるマスターのギターを弾かないこと。
話題にも上らないし、むしろ私には、神田さんが視界にもいれないようにしているように感じられた。
それが何でか気になってはいたけれど、神田さんが敢えてそうしているなら、私も深く首を突っ込むようなことはしないでおこうと思った。
演奏の終わりに、神田さんの細くしなやかな指が弦の振動を止める。
その一拍後に私の手が拍手を刻んだ。
「やっぱり神田さんのギターはいいですね! 繊細で流れるようで……幸彦くんのとは大違いです」
少し冗談ぽく笑いながら言うと、神田さんは苦笑しながら言った。
「いやいや、幸彦くんと僕とじゃキャリアが違うでしょ。でも幸彦くんもセンスはあるから、磨けば良くなると思うよ」
「そうなんですか?」