conclusion
□はーとびーと
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気付いてしまった自分の気持ち。
戸惑いながら、やっぱり切り捨てるべきだと考えていると、幸彦くんがステージに向き直った。
「神田さん。俺、明香音に告白しましたよ」
どくっ、と心臓が鳴る。
そうだ、彼はあの子が好き。彼を応援するなら、俺はこの気持ちを捨てなければいけない。
「でも、フラれました」
「えっ……」
「あんたのせいだ」
幸彦くんが真っすぐに見上げてくる。
僕の、せい?
どうしてそんなことを言われなきゃいけないんだろう。
不条理な言い方に、怒りを通り越して悲しくなってくる。
「だから」
それなのに、幸彦くんはまだ続ける。
「明香音を幸せにできなかったら、許しませんから」
そう言い捨て、背中を向ける幸彦くんが、何故かすごく強いと感じた。
僕は、
「ごめん」
自分でも分からないうちに口走っていた。
ごめん。
それが何を意味するのか、彼には伝わったのだろうか。
俺は、君を応援し続けることができなかった。
俺は、あの子に伝えたいことがある。
幸せにできるのかは、分からないけれど。
……どちらにしても君との約束を一つは違えるから。
だから、ごめん。
「だから、謝るのは何かしてからにしてください」
じゃないと俺、惨めじゃないですか。
そう続けてホールを出ていった彼の背中に、俺はもう一度「ごめん」と、そして、「ありがとう」を呟いていた。
*3* 想いを乗せた歌 完