conclusion
□lemon tea
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彼女、熊木ユリナと初めて逢ったのは、二年前の春。
この高校に入学した、その日だった。
まぁ、逢ったと言っても、見かけた程度だけど。
彼女がどのクラスなのか、なんて名前なのか、違うクラスになった僕には知る由もなかった。
ただ、廊下ですれ違ったこともないので、南校舎のクラスであることはなんとなくわかった。
それでも、僕には何をするという気があったわけではなくて、ただそんな人を見たことがある、というだけに留まっていた。
下手をすれば、綺麗さっぱり忘れてしまえそうなくらい、僕と彼女には何の関わりもなかった。
そんなある日のことだ。
『うちの学校にマドンナと謡われる絶世の美女がいる』
という噂が流れた。
同性の友人に言えば飽きられてしまうほどそういうことに興味のなかった僕は、
そんな噂を流した人と、マドンナなんて時代錯誤のネーミングセンスを持ち合わせた人の方が気になってしまった。
一体何世代前の発想なのか。
苦笑する僕を前に、一緒にその噂を聞いた友人・坂本武は、
「マジで!? うっし、見に行こうぜ!」
……野次馬精神旺盛に僕に言った。