conclusion
□四季折々
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「……おい」
この角度からじゃ見えないな。せめてもう少し上の階なら。
「おい」
「え?」
微かに隣から聞こえてきた声に、僕は普通の音量で応えた。
授業中なのも忘れて。
「お前あたってる」
「へ」
正面を向けば、口元の引き吊った古典教師。
「……今読んだところを現代語訳しなさい」
「えっと……わかりません」
結局、教科書の背で頭を直撃された。目から星が出るくらい痛かった。
昼休み。
いつものメンバーで購買のパンを食す。
「お前なにやってんだよ。マジうけるし」
「うっせー」
古典の時間の失敗談は、もはや笑いのタネでしかない。
こっちは本気で痛かったっていうのに。
「何してたんだよ、お前」
「何って……」
「なんか窓の外見てたよな」
隣の席の奴が言う。
「外?」
「あ、お前今日はサッカーできねーな、とか考えてたんだろ?」
「お前サッカー馬鹿だもんなー」
「ほっとけ」
あの後、再び屋上を見てみたけれど、あの傘は見えなかった。
誰かに聞いてみたかったけど、見間違のような気がして返って聞きにくかった。