conclusion
□四季折々
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梅雨-a rainy season-
雨が降る。
ざーざーと、音を立てて。
退屈な古典の授業。
担当の教員が動詞の活用について長々と喋ってるのを斜め聞きしながら、僕は延々と降り続く雨を教室の窓から眺めていた。
中庭の木々はしっとりと濡れ、青々と茂る若い葉が雨粒を弾く音がわずかに聞こえてくる。
そんな様子をぼんやり眺めていると、向かいの校舎の屋上で何かが動いているのに気付いた。
不審に思い目を凝らす。
屋上と教室の間を落下する無数の雨粒に雲って見えなくなりそうなそれは、向こうの空を透かす一本のビニール傘だった。
しかし、傘だけが屋上にあるわけではない。
傘は人が使うものだ。つまり屋上に誰かがいるということになる。
誰だろう?
探ってみたところで、この学校にいる人全てを知っているわけではないのだから、知らない人である可能性の方が明らかに高い。
知らない人を見つけたところでなんの得にもならないけれど、一度火のついた好奇心はなかなか止められるものではなかった。
僕は再び目を凝らして、傘の持ち主を見つめた。