conclusion
□四季折々
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はぁ……
入学式らしからぬ重いため息をつきながら校門をくぐり抜ける。
見慣れない顔ぶれが並ぶ。皆まだスーツを着こなせていない印象を受ける。きっと僕もそう見えるのだろう。靴擦れを起こしそうな革靴で歩き慣れない道を歩いていると、ふと誰かの声が聞こえた。
「わぁ〜素敵〜」
やけにはしゃいだ声だな、なんて思いながら、なんとなくそっちを見やると、スーツ姿の女性が一人、桜の木を見上げて笑っていた。
素敵……か。
普通の人が見たらそう思うんだろうな。僕にとっては嫌な花だけど。
そう思いながら眺めていたら、不意にその女性と目が合った。突然のことに目を離せずにいると、女性はやわらかく微笑んだ。
「さくら、綺麗ですよね」
「……」
話し掛けられてはそのまま無視するわけにもいかず、しょうがなく女性のそばに立った。
「私の住んでたところ、さくら無くて。こんなに満開のさくら見るの初めてなんです」
「そりゃよかったですね」
僕のことなんか気にもしないで、彼女は話さなくてもいいことを話し始める。僕にはどうだっていいこと。彼女にとっては……楽しくてしょうがないこと?