conclusion
□四季折々
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ペダルを 漕ぐ。
ゆっくり、ゆっくり。
鼻先を雪が掠る。
『雪を見ると寂しく──』
今頃君もこの冬の使者を見ているのだろうか。
そして、一人寂しくしているのだろうか……。
僕は、
雪を見て寂しくはならないけれど、
君のことを思い出して、
君の声が聞きたくなった。
自転車を止める。
すばやくポケットからケータイを取り出していまだに消していなかったメモリに苦笑して通話ボタンを押した。
なんでこんなことしてるのかは分からない。なんで今更って思われるかもしれない。
でも、
今なら絶好の言い訳ができるんだ。
数回の呼出し音の後、電話の相手が出た。
『もしもし』
変わらない、冬の空気のように澄んだ声。
「もしもし、久しぶり。あのさ……」
あたたかく包み込むことが君へのタブーなら、
今はただ、冷えた酒でも飲んで、一晩中語り明かすことならできるよ。
寂しがりやの君のために。
fin*