conclusion
□四季折々
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『だって一瞬で消えちゃうじゃん。花が散るのよりもっと短い。それに……』
それに?
君はしゃがんで、わずか積もっていた雪を手で掬って僕に見せた。
僕が見守る中で、雪は液体に変わった。
『ほら、こうするとすぐ溶けちゃうの』
君の言うことは当たり前すぎて僕にはよく分からなかった。
何がそんなに寂しいのか。
その意味が。
信号待ち。雪はどんどん強くなる。僕は手のひらを上に、雪が手に乗るのを見ていた。
あの時と同じように、僕の手のひらで白は溶けて透明な液体になる。
あぁ、そうか。
君はまるで雪みたいなんだ。
雪はあたたかさに触れたらすぐになくなってしまう。
だから君はいなくなったの?
僕の前から。僕の世界から。
でも、なくなってしまったらなくなってしまった分だけ、僕は求めてしまう。
君のいない世界がどんなに暗いものかを知ってしまったから。
つかんではいけないものだと知りながら、僕は目の前を過ぎてく雪を掴もうと手を伸ばした。
少しかじかんだ手は、目的のものに触れることなく虚空を泳いだ。その向こうで、信号が青に変わった。