conclusion
□四季折々
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春-spring-
別れがあれば出会いがある。
あの人と別れて、この人と出会った。
その季節は、春。
学校という場所には、桜の木が植えられている。
これはもう一般常識といっても過言ではないくらいどこの学校にも。
だから僕は桜の木が嫌いだった。どこにいても、桜を見れば学校を思い出す。
授業のこと、部活のこと、そしてあの人のことも。
今年の春はいつもより暖かくて、開花前線はそれはもう春一番のように颯爽とやってきた。例年なら入学式に間に合わない桜も今では満開だ。まったく忌々しいことこの上ない。
忘れたかった思いがある。誰かのために捧げた思い、時間。全てが無駄だったと後悔してもしきれない思い。だからこそあの街から出てきたというのに、どうしても春は僕に忘れ物をさせてくれないらしい。
一年前、あの人と別れた。うららかな、春の一日。桜木の花は満開で、でもその美しさが僕にとってどれほど悲しく見えたことか。
今ではよく思い出せない気もするけれど、あのピンク色の花を見るたびに胸が締め付けられるのだから、完全に忘れたわけではないのだろう。