conclusion
□四季折々
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女の子はゆっくりとした動作で僕から目を離し、空を見上げた。
「雨を見てるの」
「雨?」
静かな声につられて空を見上げた。
空は相変わらずの曇天で、昼間だというのにひどく薄暗い。その空からは、絶えることなく雨が降り注いでいた。
僕はもう一度彼女を見た。
彼女は先程と変わらぬ体勢で空を仰いでいた。おそらくは、僕が来る前から同じように。
僕は再び視線を空に戻した。
心なしか、音が静かになった気がする。
「……どうして?」
空を見たまま質問する。
雨の中、霞んでしまいそうな小さな声で。
聞こえなかったらそれでもいい。そう思っていた。
しかし彼女はまたゆっくりと口を開いた。
「雨を見てると落ち着くから」
それを聞いて何か言うわけでもない僕に、彼女は言葉を続ける。
「皆は雨なんか欝陶しいだけだって言うの。でも雨って、静かでとても心地いいものだと思うの」
彼女はそう言うと傘の下から左手を差し出して雨に晒した。
上を向いた彼女の手の平に、雨水が僅かばかり溜まる。
その様子をどこか神秘的に思いながら見ていた。