conclusion
□はーとびーと
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でも、自分も自分だ。
別に言ってしまってもいいことなのに。
幸彦くんと約束を交わしたわけでもない。ただ僕が自主的に秘密にしているに過ぎなかった。
多分、僕は重ねて見てるんだ。
幸彦くんに、昔の自分を。
好きな子のために、頑張る姿を。
あの子たちは失敗してほしくない。そう思いながら再びピックを片手に弦を弾き始めた。
懐かしい、メロディ。
ふと、スタジオに人影。誰だろう?
顔を上げる前に予想をして、名を呼びながら顔を上げた。
「明香音ちゃん?」
「懐かしい曲ね」
顔を上げた先にいたのは、予想に反した人だった。
長い黒髪、切れ長の目に透き通るような笑顔。
見たことがある。見間違えるはずもない。
「……直」
彼女は満足そうに笑った。
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