日和二次創作
□嘘つき-2
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声が聞こえる。
俺が地獄へ落とした人達の声が。
「お前のせいだ」
「許さない」
「殺してやる」
深夜、自室の窓枠に腰掛け、タバコの煙を吐きながら、どうやら自分は疲れているらしいと、ぼんやりした頭で考えた。
たまに、こんな夜がある。
普段、仕事については深く考えないようにしている。
冥界の王として、死者を裁くという、その仕事。
地獄行きと告げられた者は、泣き叫ぶ者もあれば、助けてくれと縋る者もあるし、敵意をむき出しにして罵ってくる者もある。
もう日常茶飯事だ。
いちいち気にしていたら、身が持たない。
だから、普段は心を凍らせて何も感じないようにしているのだけれど。
夜になり、周りに誰もいなくなって、ふ、と気持ちを緩めると、無意識に色々思い出してしまうのだろう。
死者の声が聞こえるのも、さほど珍しい事ではない。
綺麗な満月を見上げながら、今夜はもう眠れないな、と思う。
どうしよう、また鬼男君の所へ行こうか。
少し前、鬼男君のベッドで一緒に寝させてもらってから、眠れない夜は彼のベッドで寝るようになってしまった。
鬼男君は優しいから、訪ねて行くと黙って布団に入れてくれる。
彼のやわらかい匂いが、俺は好きだ。