月姫譚-ツキヒメタン-
□05.いざ、敵地へ
1ページ/3ページ
―朝・青春学園前―
その日、青学前に2人の男女がいた。
「今日だよね…
―…が来るの」
「あぁ…」
「ボクはいつ頃コッチ来ればいい?」
「まだわからねぇ…少なくとも、
―…が来てからのがいいだろ」
「そうだね…でも残念だ。
天使を堕とした醜い魔女を早くこの目で見たいというのに…」
「ははっ!!
止めとけよ梅桃(ユスラ)。目が腐っちまうぜ!!」
梅桃と呼ばれた少女は「…それもそうだね…」と呟き、小さく溜息をついた。
梅「でも伊織(イオリ)はこの間見かけたんでしょ?どうよ」
少年の名は伊織と言うらしい。
「ははっ…………はぁ…」
梅桃の問いかけに苦笑いした後、溜息をつく。
伊「ゼンッゼン可愛くねーよ!!
遠くにいてもきっつい香水の臭いが漂ってくんだぜ!!?
澪のが100万倍、否、比べもんにならねぇくらい可愛いね!!!!」
梅「そんな当たり前の事言わないでよ…比べたら澪に失礼極まりないよ」
[澪]。
2人は確かにそう言った。魔女にはめられ、仲間に裏切られ、自ら命を絶った、哀れで美しい天使の名を―…
梅「―…そろそろボクは失礼するよ」
伊「おぉ。また連絡する」
梅「ん。…[月姫]によろしく言っといて」
伊「ハハッ…はいよ」
梅桃は伊織と青学に背を向け、後ろに控えていた車に乗ってその場を去った。
伊織は梅桃を見送り、しばらくしてから青学の門をくぐった。
伊「やっと月姫が…この[青の園]にやってくる…。
くくっ…さて、どんな復讐劇を観せてくれるのやら…。俺達も、その劇に参加させてくれよ?
俺も梅桃も、楽しみでしょうがねぇんだからよ…」
歪んだ、狂気に満ちた、そんな笑顔を浮かべながら、伊織は教室に向かった。
.