月姫譚-ツキヒメタン-

□00.序曲 -PRELUDE-
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今、私が立っているのは学校の屋上。
―――…ここは、私にとって"特別"な場所だから。



ここから見る景色は、前と変わらず綺麗で…何だかとっても、…泣きたくなった。



「何で…こうなっちゃったのかなぁー…」




今までは、学校生活が毎日凄く楽しかったのに、今じゃ、只苦しいだけ。



「……」



携帯を取り出して、彼女に電話をかけた。私の、一生涯の大切な、親友。



『―――…もしもし?』


「あ…もしもし、神楽?」


『えぇ、こんな夜遅くにどうしたの?澪』


「…何か、眠れなくて…もしかして、寝てたかな?」


『いいえ?生徒会で使う書類をまとめてた所よ』


「頑張ってるんだね、生徒会の仕事」


『やりがいがあるから、かしら?毎日楽しいの。

澪は?青学はどう?』


「―――――…うん。楽しい、よ?
テニス部の皆、個性的でね?そっちに負けないくらいだよ」



――――…言えない。
"イジメられてるから、助けて"なんて。嘘吐いて、ゴメンね?


『そう…良かった。
あ、たまにはウチに遊びに来なさい?皆喜ぶから』


「…うん。…ねぇ、神楽」


『何?』


「私、…神楽が大好きだよ?
神楽に出会えて、本当に良かった」



『…急に改まって、どうかしたの?』


「ん…言いたくなっただけだから、気にしないで?」


『そう…私も、澪の事が大好きよ?私の親友だもの』


「…ありがとう、神楽…」



最期の最後に、神楽の声が聞けて、良かった。


「じゃあ…明日、早いから…もう寝るね?」


『澪は頑張り屋だものね、私も見習わなきゃ。
おやすみなさい、澪』


「うん、おやすみ…バイバイ、神楽」



通話の切れた携帯を、スカートのポケットに入れて、屋上のフェンスを越える。
…高い。ちょっとだけ、怖いな。でも。


「私がいなくなれば…全部、戻るよね…?」



…守ってくれた皆、ごめんなさい。
私、弱いから、もう無理だよ…。
…生きる事に、疲れちゃった。




「…ごめんなさい…お兄ちゃん…月姫…」




弱い私を、どうか、赦して下さい――――…



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