* 読み切り BL *

□不安な差=確かな距離(短編)
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「不安な差=確かな距離」





ガチャッ


「あっ、先輩、お帰り。」

「お前また来たの?」

「うん。今丁度、レポート終わったところ。」


裕貴(ゆうき)はベッドの際に背を預け、レポート用紙をヒラヒラさせながら、ヘラっと笑いかけてくる。



俺、隆之(たかゆき)と裕貴は、高校の陸上部で先輩と後輩の関係だった。
俺が三年生で裕貴が一年生。
といっても、大会成績は全く逆。

裕貴は背も高く、それ相応に足も長い。いわば陸上選手向きの体つきなのだ。
運動神経も良かったのだろう、どんな競技もすんなりこなしてしまう奴だった。
確かメダルも何個か獲っていたはずだ。

一方俺は、背が低く小柄で、得意なのは短距離ぐらい。
他はあまりいい成績を残せないまま終わった。

手本になる様な先輩でもなかったのに、なぜか裕貴は俺の傍によく居た。



その理由を知ったのは、高校の卒業式終了後。


「俺な、ずっと…先輩の事、好きだったんだ。」


部室に呼び出され、言われた第一声が告白だった。
驚きのあまり固まっていた俺を見て、裕貴はいつものように気の抜けた笑顔で笑った。


「ははっ、冗談…言ってみた。驚かせてごめんね。」


その言葉に腹が立った俺は、確か…そう、胸倉掴んで怒鳴ったんだ。


「…冗談で、んなこと言うんじゃねぇ!」


あの時、冗談と聞いて、無性に悲しくなったんだ。
そして気づいた。
あぁ、俺はこいつに『好き』って言われて嬉しかったんだって。
こいつが好きなんだって…


怒鳴った後、泣きそうになるのをぐっと堪えて、その場を去ろうとした。


「先輩!先…―タカ!!」


その声に反応して立ち止まる。
すると、後ろからふわりと抱きしめられた。


「タカ…冗談とか言ってゴメン。…好き、大好き。」


そして優しいキスをした…。






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