* 読み切り BL *

□紡がれる想い(短編)
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「紡がれる想い」





最近、俺には悩み事がある。

でも、人に相談できるような内容じゃないのが困りもの。
ひとりで考え続けても答えは出るどころか想いが強くなるばかりで…。


お昼休み、そんな解決しない悩みを頭の中で巡らせていると、心配そうな顔でハルキが声をかけてきた。


「晃(あきら)…なんかあった?元気ないけど?」


俺の悩みの元凶。

西村ハルキ。


俺の好きな人・・。


何も知らないハルキは、どうしたのかと何度も聞いてくる。心から心配してくれているのがわかる。だからこそ言えないのだ。

親友として接してくれるハルキには・・・。


「何でもないよ。」


言いたくても言えないもどかしさと苛立ちから口調がきつくなる。
そんな晃の態度にハルキが怒りを露わにする。


「あっそ!じゃーもう知らねぇよ。勝手にいじけてろ!」


ベーっと舌を出して教室を出て行ってしまった。


あっ。


すぐに追いかけて謝ろうとしたが、今行けば確実に想いを伝えてしまう、そんなことをしてハルキに嫌われたら?
そんな臆病な心がハルキを追いかける足を止めた。



放課後、生徒が帰り支度をし始めた頃、晃にメールが届いた。ハルキからだ。


『三階 渡り廊下』


それだけしか書いていない。来いということなのだろう。
あれから一言も口を聞いていない。きっとまだ怒っているのだ。
行けば理由を問いただされるのはわかっているが、好きな人に口を聞いてもらえないというのは、やはり辛い。
覚悟を決め、渡り廊下へと向かった。



ひと気の無い渡り廊下にハルキがいた。

夕空を眺める姿にトクンと心臓が脈打つ。華奢な体に白い肌、サラサラと揺れる黒髪が夕日に良く映える。
そんなハルキに見とれていると、視線に気づいたのか、ふり返りこちらを見た。


「…やっと来た。遅せーよ。」


不機嫌そうにそう言うとハルキはこちらに歩み寄って来た。


「なぁ、お前の悩みって俺に相談できないこと…なのか?」


弱々しく声を発しながらハルキは晃を見上げる。そんな行動も愛おしくて。
でも…


「あぁ、俺の問題だから。…昼間八つ当たりして悪かったな。」


「いいよ!八つ当たりくらい。俺は晃が一人で悩んでる方がつらい。」


今にも泣きそうな瞳を真っ直ぐ晃に向けてくる。
晃は衝動的にハルキの腕を掴み、抱きしめていた。もう、限界だ。


「…−きなんだ。」


「えっ。」


「俺、ハルキのこと。好きなんだ。」


ぎゅっと力を込めて抱きしめる晃にハルキは小さな声で呟いた。


「う…そ。だって、俺…」


ハルキの顔を見ると真っ赤になり必死に言葉を紡ごうとしている。
制服を掴み手は少し震えていた。


「やっぱ、気持ち悪い…よな。」


悲しそうな表情を浮かべて話す晃にハルキは弾ける様に顔を上げ捲し立てた。


「ち、違うって!だって俺、晃に嫌われたんじゃないかって、俺頭ワリーし、頼りになんないし晃が何も言ってくんねーから、他の奴に相談んのかとか。」


必死に話すハルキ顔は驚きと不安に満ちていて、晃が名前を呼ぶとビクッっと肩を揺らせた。


「ハルキ、それって…」


「///…うっせー。好きな奴が悩んでんのに何も出来ない自分にイラついてただけだよ。ワリーかよ、バカ。」


顔を真っ赤にし、早口で告げたその言葉が何よりも嬉しくて。
晃も頬を赤らめながらハルキに告げた。


「すっげー嬉しい。大好きだよ、ハルキ。」



そこには赤く揺れる夕日に照らされた二人の笑顔があった。





end


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