Do you…(ry

□09.小さな手を包む臆病な手
1ページ/1ページ




「   」


静香が口を開いたのは、顔を上げてからしばらく経ってから
永遠にも感じられる沈黙
喫茶店特有のお洒落なBGMが何よりの救いで
でもそれが静香の消え入りそうな声を文字通り、消してしまった


「…静香…?」


コワイ
言葉を促したけれど、拒絶だったら?
キライだと、また"一緒に居たくない"と言われたら、俺は……――――


「ご、め…ん…。ごめん、ごめんね涼太ぁ…」


必死に涙をこらえている静香
どういう意味の"ごめん"?


「ごめん、涼太ぁ…私、わたし、涼太が…すき。すきですきで死んじゃうかもしんないくらい、涼太が…っ、いっぱい傷つけて、ごめん。今さらすき、だなんて、許してほしいなんてそんなのだめだってわかってる…けど、真剣な涼太に応えなきゃって、だから、どうしても私が涼太のこと好きだって知ってもらいたくて…わがままで、ごめん。ごめんなさい。

…涼太が、大好き」


大きな目からぼろりと涙がこぼれ落ちた
俺も泣きそうで、でも必死でこらえて口を開く


「許せるわけ、ないじゃないスか」

「……っ、」



びくっと静香の肩が震えたのが見えた


「ずっと、ずっと好きだった。頭がおかしくなるかと思うくらい、好きで。だから、あの中学の頃、静香を守れなかった、そんな自分が許せないんだよ…!」


そんな自分だからこそ


「なぁ、静香…、告っといてなんなんスけど、俺で良いんスか?俺の方がきっと何倍も静香を傷付けた。…困ってるのが分かってるのに気持ちぶつけたりしてたし、ホントサイテースわ。
俺で、いいの…?」


ちゅ、
そんな可愛らしい音と共に落とされた口付け
ずっと、夢見てた静香とのキス
ぽろ、と一粒の涙が頬を滑り落ちた


「そんなの、当たり前、だよ」


ぎゅう、と抱きしめられる
まるで、今までのことも、これからの罪も溶けて消えるみたい
ふわりと笑う静香
愛おしくてまた、涙が出そうになった


「今までのは、ね、おあいこ
たぶん…同じくらい傷付けあっちゃった、んだよ。だって…双子だもん、ね。
涼太を一番わかってて、涼太に一番近くて、涼太を一番愛してるのは、片割れの…私。そうでしょ?

って、涼太?何でかたまっ…」



ぎゅうっと力いっぱい抱きしめる
静香がびっくりした顔してるけど、心配してるけど力は緩めない
だって、だってだって!


「ちょ、涼太?どうしたの?」

「愛してるって、言った。静香が、俺のこと」

「う…い、言った、よ…」


かあああって音が聞こえそうなくらい真っ赤になる静香
愛おしくて仕方ない


「俺も、俺も愛してる。
世界中の誰よりも、静香を」


今まででいっちばんの笑顔で言う
真っ赤なままの静香は俺の胸に顔をうずめた


「…涼太、クサいよ」

「ふふーん、うれしいくせに。」

「う、うるさいなぁ!」


赤い顔でこちらを睨む静香にキスを落とす
好きが混じり合った気がした

離れて、顔を見合わせてクスッと笑って


「愛してる」



小さな手を包む臆病な手


不安が残らないわけじゃない
でもそれ以上にキミが欲しいんだ


→NEXT             11/02/02

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ