適当二次小説

□第四節
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第三十七 『開業』










里の一部に人だかりができていた


中心には真四夜



既に宣伝を行っているようだ。なんというか、早い


「というわけで! 万屋なるものを開業いたします! 小さなお手伝いでも大きな工事でも用事がありしだい気軽に言ってください!」


皆に聞こえる程度の大声で呼びかける


里の青年がまた大声で聞く

「小さな手伝いって、本当に何でもいいのかい! ネズミ駆除とかでも?」

「何でもOKですよ! 本当に!」

沸き立つ衆の中から、少しばかり感嘆の声があがった








こうして宣伝も一通り終わり、人がバラけていく


「あ〜、緊張した」

流石に大勢の前で物事を行うのは緊張するものなのだろう、

真四夜は一段落ついた後、安堵の表情をだした


遠目に見ていた慧音が近づいてきた


「いい雰囲気だったな、よかったぞ。」

「なんとかなりましたかね…、緊張しすぎて声大きく出し過ぎましたけど。」

「あれぐらいで調度いいよ。」

慧音は大丈夫だ、といわんばかりに頷いた






人も散漫になったころ、一人の少年が残っていた


「お、どうした。何か依頼か?」

「よかったな真四夜、初仕事だ」

慧音は肩を軽く叩くと、邪魔にならないようにとの気遣いか、その場を去っていってしまった



「…」

少年は恥ずかしそうに黙っていたが、やがて決心したように口を開いた


「あの…、花を、取ってきてほしいんだ」

「花? そこらへんにも生えてるじゃねえか」

「あんなのじゃ駄目なんだよ!おじさん達に聞いたんだ。その…、恋が実る花があるって。」

「恋ぃ?」

真四夜は顔をしかめた、生まれてこの方そんなものをしたことがないのだ。考えた事もないだろう



「取って来てよ。お願い!」

もはや懇願している少年

「まあ…、どんな事でも引き受けるって言っちまったしな…。任せとけ!」

少年はそれを聞くと、嬉しそうに笑顔で走っていった。途中何度も真四夜に手を振りながら。

「無邪気なのかマセてるのかわかんねえな…」


と、そこまで言って重大な事に気付いた


「どんな花とかすら聞いてねえ!それにどこに生えてんだそれ!」


悲壮感たっぷりで叫んだ


かくして、恋もしたことがない男が恋を成就させるための恋の実る花の聞き込みがはじまった



真四夜は何故か悲しい気分に襲われていた




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