適当二次小説

□第一節
1ページ/12ページ





とある豪邸内。



『そっちに行ったぞ!』

『主の元に行かせるなあ!』

館内に、張り裂けんばかりの男達の怒号が飛び交う。

男達が走り抜ける中、中心部ともなる地点が、突如として紅く発光し、炸裂を起こした。
『うわぁぁ!』

通路が爆発、数人が巻き込まれてしまい、うろたえる衆からどよめきが漏れる。


通路は大量の瓦礫に阻まれ、進む事が出来ない状況に陥っていた。

『回れ! 道を回って追いかけろ!』

『追え!』

男達は急ぎ走り、別の道に向かう。





その男達とは瓦礫をはさみ、対になる形で立っている青年が一人。

「もうすぐ…」

一言呟き、青年は瓦礫を背中にむけ走りだした。











それから数分後のことである。


「…ここか」

青年は一際大きな扉の前に立っていた。
そしてゆっくりと、ドアノブに手をかけ一気に開ける。


壊れるのではないかと心配になるほど、勢いよく開かれた扉。
青年の目に映るは、頭に白髪の混じった初老の男性の背中。

そう、この青年の、父親の背中。


「おお…、真四夜(ましや)か、」

「約束通りだな、てめえを殺しにきたぞコラ」

真四夜と呼ばれた青年はにやりと笑う

「焦るな、今となってはたった一人の家族だろう」

「誰がテメェなんかと家族だ、その家族を、殺しといて」

やけに落ち着いた様子の初老の男性を前に、昂ぶる気持ちを抑えきれない真四夜。

その様子を見て、初老の男性はにやりと笑った。


「仕方ないだろう、危険過ぎるんだよお前らは、現にそうだろう? 今までに何人殺した?」

「テメェがけしかけてきたんだろうが、正当防衛だ」

「どうだかな、殺したことには変わり無い、貴様は危険なんだよ、化け物めが」

「…」

父親の言葉がきっかけだった。
先程までとは違い、険しい表情になった真四夜の額に、はちきれんばかりに青筋が浮かぶ。


「人を殺し、そして父親も殺そうとしている、わしも正当防衛だ。貴様らのおぞましい能力に殺される前に殺した、ただそれだけだ」


言葉を連ねる父親を、真四夜は何も言わずにただただ睨みつける。

もはや言葉を紡げないのか、一層睨みを利かせる真四夜の手が、赤く光を宿していた。

「血は絶やさないといけないんだ、危ない血はこれ以上」
「黙れやぁあ!」

セキを切ったように真四夜が叫び、父親に向かって走りだす。

いままでの事全てをぶつけるべく、目の前に存在する忌まわしき物体を破壊するべく。



しかし真四夜が一歩、二歩、三歩と踏み出した時であった。
地面が突如まばゆく光り始めたのだ。

魔法陣のような模様が浮かび、かと思うと、突如として黒い帯が地面から無数に伸びてくる。
それらは容赦することなく、真四夜に縛り付いてきていた。

「なあっ!?」

次々と現れる黒い帯に、完全に押さえ込まれてしまった真四夜の動きが止まる。

自分の邪魔をするものが、ここにも、と真四夜は魔法人を睨み返す。
しかし、なおも魔法陣の輝きは止まることはない、それどころか増して、真四夜に襲いかかってきていた。


「なんだ!なにをするつもりだコラァ!」

真四夜が喋る間にも帯は絡み付き、すでに身動きが取れる状況ではなかった。

思い通りにいかない悔しさが顔に滲み出る、初老の男性は咳払いを一つして口を開く。

「いや…、貴様を殺そうとすればするほど、逆に痛い目をみるもんでな。術師に頼んで、異次元に飛ばすことにしたんだ」


初老の男性は、笑みを浮かべながらとんでもない事を口にする。

だんだんと血の気が引いて来た頭をなんとか回し、真四夜は力いっぱいに叫んだ。

「ぐっ…、くそっ、やめろ! 死ね!」
「止めないね…、危険なものは排除しないとな」


真四夜はさらに睨む。
しかしそれが何になろうか、負け犬の遠吠えにしか見えない行動に、初老の男性の表情を歪める事は叶わなかった。

「う、お、ぉ…!」

真四夜は足に力を今までにないほどに入れ、震えながらも何とか立ち上がる。


「はは、今更どうする気だ? もうここから消えるんだぞ、お前は」

「…最高の…、置き土産だ糞野郎が」

「…?」

苦し紛れの一言だろうか。
訳も分からずと、初老の男性は訝しげな目で真四夜を眺める。

そうもしないうちに、魔法陣が更に強く発光を始めた。

そして。

「う!?」

より一層強い光は、真四夜を完全に包み込み、溢れんばかりに部屋を埋め尽くす。



やがて光が収まると、あれだけ存在を主張していた真四夜の姿はもう、部屋のどこを見渡しても、確認することは出来なかった。

この世界からの抹消。
正確に言えば消す、とは違うのかもしれないが、真四夜は消えてしまったのだ、この世界から。

誰にも、認められる事無く。


「ハハ、やっと終わったわ、これで奴らを絶やすことが出来た」

そう言い、父親は笑いながら、これでもかという位に立派な椅子にどっかりと座る。

先ほどとはうってかわって、物静かな部屋がそこにある。
残光が少し舞っているが、それも時が経たぬうちに消えゆくのだろう。


「大丈夫ですか!?」

直後、青年を追いかけていた男達が一斉に部屋に駆け込んできた。

開いているドアでも目にしたからであろう、焦ったような声は、どうにも間抜けに思えた。

「おお、お前達か、ご苦労だった」

「え、は?」

「奴は死んだよ、どことも知らぬ場所で」

「…? は、はあ」

何を言っているのか理解が出来ない男達は、不思議そうに顔を見合わせていた。


「これで、一安心したよ」

初老の男性がそんなことを言った後、ここぞとばかりに一際大きく、たか笑いをあげた。

まるで消えてしまった自分の元息子にも聞かせるように、いまだ状況を飲み込めていない男達は、ざわめいていたが。







同時に。


魔法陣があった場所、いやそれだけではなく、屋敷の壁や床などいたる所が赤く変色し。

大爆発を起こした。


初老の男性の高笑いも、男達のざわめきも、程なくしてこの世界から消えることになろうとは。この場にいる誰もが考え付かなかった。

次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ