素敵文
□一分一秒も離れたくない
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「一ヵ月、かぁ…」
目の前にある大きな荷物を見てスクアーロは大きな溜め息を吐いた。
今日の夜からスクアーロは一ヵ月の間、国外任務に就く。任務の内容は、とあるファミリーの殲滅(勿論一人残らず)、と至って簡単なのだが場所が場所なだけに時間がかかる。
「あ゛ー!!」
奇声を発するものの、その任務が取り止めになることはない。
彼がこんなにも任務に就くことを渋る理由。
それは…
「おいカス、とっとと行け」
「…わかってらぁ」
このヴァリアーのボスであり恋人であるザンザスの元を離れなければならないから。
スクアーロは渋々荷物を持ち、玄関ホールへと足を進める。
一ヵ月、たった一ヵ月だと心の中で何度も復唱して。
ザンザスは、そんなスクアーロの様子に気付いていた。
彼、ザンザスだって恋人と一ヵ月も離れるのはつらい。しかし仕事は仕事。割り切らなければならないのだ。
「…行ってくるぜぇ」
「あぁ」
「あんたが見送るなんて珍しいなぁ」
「五月蠅ぇ、とっとと行け」
どんなにつっけんどんな態度をとっていようと、本当はザンザスだってスクアーロと同じ気持ちなのだけど。
「じゃあなぁ」
ザンザスに背を向けて扉に手をかけるスクアーロ。
ぐ、と力を入れた瞬間、ザンザスが思い切りスクアーロの髪を引っ張った。(それはもう髪がぶちぶちと音を立てて抜ける程。)
「い゛っ…!なにし、」
「行くな」
ぎゅ、と後ろから抱き締めて、スクアーロの首筋に顔を埋める。抱き締められたスクアーロは困惑状態で、小さく遠慮がちにザンザスの名前を呼んだ。
「やっぱり行くな」
「でも任務、」
「他の奴に任せろ」
「良いのかぁ?」
「…てめぇと一ヵ月も離れるのは俺だってツラいんだよ」
「!ボス…」
「だから行くんじゃねぇ」
ザンザスはスクアーロの肩を掴み、自分の方を向かせる。スクアーロの碧眼にはザンザスが、ザンザスの紅蓮の瞳にはスクアーロが映り、暫く二人は見つめ合う。
「スクアーロ」
「ザンザス…」
「今度から長期任務があれば俺もついて行く」
「じゃあ、……任務はとっとと終わらせちまって、余った時間は、その…」
「デートだろ?いくらでもしてやるよ」
「本当かぁ!?」
「あぁ」
満面の笑みを浮かべたスクアーロは、ぎゅうぎゅうとザンザスに抱き付く。
そんなスクアーロを眺めながら、ザンザスは滅多に見せないような穏やかな笑みを浮かべ、スクアーロを抱き締め返した。
ザンザスがスクアーロの頭のてっぺんにキスを落とす。すると、スクアーロは何かを訴えるようにザンザスの目を見つめる。
「どうした」
「…頭じゃなくて、」
「じゃなくて?」
「…わ、わかってるくせに!」
「言ってみろ」
「………く、ちに…」
スクアーロが顔を真っ赤にして、今にも消え入りそうな声で呟くとザンザスは褒美だ、とスクアーロの唇に噛み付いた。
しばらくして、スクアーロは此所が玄関ホールだったということを思い出し、慌ててザンザスの胸板を叩いて唇を離してもらう。
「なんだ」
「…ここ、玄関ホール…!」
なんだそんなことか、とザンザスは気にする様子を見せない。
「…部屋行こう、ぜぇ?」
「はっ、いつの間にそんな誘い方覚えたんだ?」
「あんたしかいねぇだろ?」
そうじゃなかったらテメェも相手もぶっ殺してやるよ、とザンザスは喉で笑い、スクアーロの肩を抱く。二人は寄り添ってザンザスの部屋へと向かった。
一分一秒も離れたくない
「…で、長期任務は誰がつくのかしら?」
「さぁ」
「うげ、王子お腹いっぱーい」
「…ボス…」
――――――
6666番踏んだしめじ様へ!
リクエストに沿えているか微妙ですが…
もしよろしければお受け取り下さい!
リクエストありがとうございました!
Dolce、雨宮雪華